サッカー日本代表はワールドカップ(W杯)メンバー選考前最後の2戦で、これまでの4-3-3から4-2-3-1にシステムを変えた。MF鎌田大地(26=Eフランクフルト)をトップ下に置く攻撃的な戦術で23日の米国に2-0で勝ち、27日のエクアドルとは0-0で引き分けた。最終予選で熟成させたシステムより、格上と対戦するW杯仕様のフォーメーションを試し、一定の結果を残した。トップ下として日本代表や磐田などで活躍した藤田俊哉氏(50)にシステム変更の狙いを聞いた。

システムを変えて、日本が極端に攻撃的になったわけではない。得点の可能性を高め、より攻撃的な守備ができる。森保監督が最も効率よく、W杯で勝負できるシステムへの変更という表現が最も妥当だろう。

日本は1勝2敗で迎えたW杯最終予選の第4戦オーストラリア戦から、それまでの4-2-3-1から4-3-3にシステムを変えた。それがうまくはまり、7大会連続W杯出場を決めた。守備的中盤が3人の4-3-3は、絶対に負けられない戦いにマッチしたシステムだった。その一方で、ボランチの立ち位置が相手ゴールから遠い分、攻撃の破壊力は落ちる。

トップ下を置く4-2-3-1はどうか。今回、森保監督が再びシステム変更したのは、所属クラブで好調だった鎌田の存在感に期待したからだろう。米国戦ではそれがうまくはまり、期待を膨らませた。W杯ではドイツ、スペインと同組。トップ下を置くことで、強敵にもひるまず、積極的な守備をベースにしながら、勝負するという監督の意思の表れとみた。

トップ下に鎌田を配置することで、FWと鎌田で相手DF陣のボールを奪いにいける。うまくはまって高い位置でボールを奪うと、相手ゴールの近い位置で得点を狙える。自然とゴールの可能性は高まる。直接ボールを奪わなくても、右か左に相手を追い込むことはできる。相手の攻撃起点を限定させることで、後方にいる日本の選手たちは守りやすくなる。

相手が強いほど、最前線からのプレスを掛け続けることは難しい。トップ下の選手が敵陣で孤立することもある。ボールにさわりたいから立ち位置を下げたり、サイドに流れると、チームのバランスが崩れ、相手の術中にはまってしまう。

トップ下に南野が入ったエクアドル戦の前半はその傾向があった。前線からのプレスはかからず、主導権を握られた。うまく機能させるには、多少苦しくてもトップ下の選手は高い位置での効果的なスペースを探しタイミング良くボールを受けたい。安易にボールを受けに下がってきて欲しくない。プレー機会が少なくなることがあり、我慢するには勇気も必要だが、それが相手を嫌がらせることにつながる。高い位置でのプレー回数と比例して得点の可能性も高まる。今の鎌田なら、それができる。

極端な言い方をすれば、中盤に守備的な選手をそろえる場合の4-3-3は失点しない布陣。今回採用した4-2-3-1は点を取るための布陣だ。今の調子がW杯まで続くと考えた場合、鎌田は日本代表の中心となる。FWを追い抜いてゴールを狙ったり、両サイドの伊東と久保らを生かしたり、FWへの良質なスルーパスも出せる。2列目からのミドルシュートも打てるし、セットプレーも期待できる。

日本の目標はW杯8強。1次リーグの相手を考えた場合、決勝トーナメント進出の可能性は、過去のW杯に比べて間違いなく低い。そのような状況の中、力関係を気にしすぎて守るだけでは、突破はますます厳しくなる。可能性を最大限に上げるためにも、鎌田をトップ下に置きタレント豊かな攻撃陣と融合させ戦うことが、最も現実的なシステムと考えている。(磐田スポーツダイレクター・元日本代表MF)

◆藤田俊哉(ふじた・としや)1971年(昭46)10月4日、静岡市生まれ。清水商高、筑波大から95年に磐田入団。01年にはJリーグMVP。12年引退。オランダVVVのコーチやリーズのフロントスタッフ、18年から日本サッカー協会の欧州駐在強化部員として日本人選手のサポート、欧州クラブとの橋渡し役も務めた。今月、黄金期を築いた古巣の磐田の強化責任者にあたるスポーツダイレクターに就任。元日本代表。