サッカーのワールドカップ(W杯)カタール大会が11月20日に開幕する。7大会連続7度目出場の日本は、1次リーグE組。優勝経験のあるドイツ、スペインと同じ厳しい組に入った。
11月23日の日本の初戦、ドイツ戦まで1カ月。日本のサッカー史上最もW杯を愛し、W杯に愛された本田圭佑(36)はいま、何を思うのか-。
(<1>からつづく)
◇ ◇ ◇
「W杯優勝」を公言して過去3大会を戦い、今も監督として目指していると言い切る本田は、後輩たちを、どうみているのか。
W杯への熱い思いを、どう受け渡していくのか。
そして、自らの経験から伝えられることがあるとすれば、それは-。
「(思いは)伝わってると思いますよ。僕だって、ヒデさん(中田英寿氏)とかに、そういうことを直接言われたことはないけど、ブラウン管を通してとか、記事を通して、ヒデさんの発言とかは、やっぱり影響が少なからずあったと思いますし。
別に、こういうことは代表期間中、代表でプレーしてた時には言ってこなかったけど、でも、それ(=影響)は必ずしも、ないとは言えなくて。
だから多分、今の代表選手たちも、べつに僕に限らず、他の日本代表の選手たちのプレーや言葉やなんやっていうのは、ずっと子どものころから、記憶にはあるんじゃないかな、と。当然ながら日本代表、W杯、ヨーロッパでのプレーっていうのを、夢と思いながらプレーしてるんでしょうから。
引き継いでいるか引き継いでないか、そして、引き継いでほしいと思っているか思ってないか、そんなことは置いといて。まあ、記憶にはあるって意味では、じゃあ、それは引き継いでいるっていっても、おかしくないかな」
今回、日本代表に本田はいない。開幕まで、時間は待ったなしで刻まれていく。
無類の勝負強さを、世界中が注目するW杯という場で発揮してきた。準備段階で一番大事なこと、伝えられることが1つあるとしたら、それは何なのか。
「自分だったら、焦って、もっとやらなアカンって焦って、このままじゃ優勝できへんって焦って、自分を追い込み続けながら多分、試合に入るんですよ。そういうことをシーズン中から長いことやってましたよ、それは。日々、基本的には追い込んでいる。
自分を向上させるという点では、他の選手も同じなんですよ、プロだし。でも、僕はそれをW杯に自分の重要度、比重を置いているので、何ていうかな、準備の仕方が緻密っていうか、うん。
普段リーグ戦やってるときって、1週間レベルで準備できるのが、W杯って、(ここからでも)ドイツ戦に向けて準備できるって考え方。
たとえば、1週間にできる自分のイメージトレーニングとかも、回数多くできるんですよね。
そんときもワーストシナリオとかも、グッドシナリオとかも、いろんなパターンをまた、イメージトレーニングできるわけですよ。もちろん、いろんなシチュエーションも、場合によっては自分がサブで出ないといけないシナリオだって、あるかもしれないじゃないですか。ロシアの時だけは、そういう描き方をしてったわけで。
それは、リーグ戦ではできないですよね。そのへんがW杯の面白いところで。長いから、準備期間が。だから勝負強さが出るわけですよ。一発勝負なんですけど、準備期間が長いから、やれることがたくさんあるわけですよ。それを、一応、僕は全部やったと自負はしている。それなりのことはね。
オレからアドバイスしたいのは、リーグ戦の準備の仕方と、W杯の準備の仕方は、同じじゃアカンよ、ということ。何となく、自分の答えとしてはもってる。それが正解とはいわないけど、一種のオレのやり方はそうで、かつ、それでまあ、結果が出た部分も、一部あるから。それを1つアドバイスとして聞いてもらえるなら、こういうアドバイスになるかなって」
もちろん日本を応援しているが、どこか複雑な思いもあるようだ。それはもしかしたら、サッカーに、日本代表にかかわる者なら誰もがどこかに抱えており、持つべき感情なのではないだろうか-。
本田ははっきり、こう言葉にした。
「これは難しいけど、自分が優勝させたいって気持ちはあるよね。それがまず、自分のエゴね。でも、応援してる? っていわれたら、応援してる。やっぱりそれは、自分たちの知ってる仲間が出てるし、直接知ってるヤツも出てるわけで。そいつらが、やっぱ活躍して、いい結果が出てくれれば、それは素直にうれしいな、と。
でも一方で、やっぱ、悔しいなって気持ちもあるよね。自分が、もっと自分の価値を証明できるポジションにいられないこと。だから、見てろよ、って。高校の時もそう思っていたし。2006年、ドイツW杯の時も、グランパスでそう思っていた。
近ければ、その距離が近ければ近いほど、多分悔しさは増すよね。(メンバー選考でも)選ばれそうであれば、悔しさは増すよね。でも、その思いがまだ、めちゃめちゃ強くないっていうのは、もうちょい僕がW杯を指揮するまでの距離があるのかな、と。
そう思いながらも、今にみてろよ、って気持ちは自分の中ではありますよね。誰にみせるとかではなくて、自分で鼓舞してる。自分と闘ってるというか」
本田は、今もW杯と闘っている。【八反誠】
(おわり)
◆本田圭佑(ほんだ・けいすけ)1986年(昭61)6月13日、大阪府生まれ。石川・星稜高から名古屋グランパス-VVVフェンロ(オランダ)、CSKAモスクワ(ロシア)からACミラン(イタリア)へ。セリエAの名門で背番号10。その後、パチューカ(メキシコ)、メルボルン・ビクトリー(オーストラリア)などでプレー。
08年北京オリンピック(五輪)日本代表。W杯は10年南アフリカ大会から3大会連続で選出され出場。日本代表として11年アジア杯カタール大会優勝に貢献しMVPに輝く。国際Aマッチ通算98試合37得点。182センチ、74キロ。左利き。
現在は選手でありながら指導者としてカンボジア代表の実質的な監督を務めている。多くの会社の経営に関わりながら、投資家としても精力的に活動。教育にも強い関心を示し、活動を続けている。

