浦和が9年ぶりに国内タイトルを獲得した。苦手の神戸とのアウェー戦は、前半27分のMF梅崎司(28)の先制点を生かして引き分けに持ち込んだ。開幕からの連続無敗記録を16に伸ばし、1試合を残して11年ぶりに復活した2ステージ制の前半第1ステージの優勝を決めた。ステージ優勝は04年第2ステージ以来2度目で、タイトルは06年度のJ1年間優勝と天皇杯以来。史上初のステージ無敗、さらには土壇場でG大阪に逆転優勝を許した昨季のリベンジとなる年間王者を目指す。

 タイトルへの最後の試練を乗り切った。後半ロスタイム。MF宇賀神を退場で欠く浦和は、神戸の波状攻撃を受け続けた。DF槙野が、MF関根が、敵陣のコーナーに向かい、懸命にボールを蹴り出す。MF阿部が、DF那須が、ゴール前でクロスやシュートを防いだ勢いで、地面に体をたたきつけてもん絶する。

 選手の求めに応じ、サポーターも声援を強めた。6分が過ぎ、ボールを右サイドライン外に蹴り出した瞬間、終了の笛が鳴った。今回も負けなかった。そして優勝が決まった。選手たちはピッチ中央に円陣をつくり、喜びを爆発させた。

 阿部は「退場者が出て10人になっても、その分、ゴール裏の仲間が励ましてくれた」と振り返った。昨季はリーグ終盤に勝ちから遠ざかり、G大阪に逆転され、優勝を逃した。優勝争いのストレスと敗戦の悔しさで、MF柏木は食事後すぐ吐くようになり、みるみるやつれた。宇賀神はG大阪との直接対決に敗れた際の、MF今野のガッツポーズが脳裏に焼き付き、眠れない夜を重ねた。

 今年に入ってもリーグ開幕直前、ゼロックス・スーパー杯で因縁のG大阪に敗れるなど、アジア・チャンピオンズリーグも含めて3連敗した。今年もまた勝てないのか。試合後、スタンドのサポーターからは、厳しい声が浴びせられた。

 分かるけど、オレたちこそ悔しい。温厚な主将阿部だが、この時はスタンドに歩み寄ると、激しい言葉で反論した。「必ずやるから!」。この背中を見て、選手たちの気持ちは固まった。絶対に負けられない。

 これまでは、終盤の失点で試合を取りこぼすことが多かった。それが先制されても冷静に試合を運び続け、試合終盤に逆転するパターンが増えた。甲府、仙台、鳥栖、そして今回の神戸といった、これまで苦手としてきたアウェー戦でも、勝ち点を重ねてきた。

 「我慢できるようになったのが成長」と阿部は言う。負けられない。負けたくない。そんな勝負へのこだわりは、開幕16戦無敗という結果となって表れた。

 阿部は優勝トロフィーを来日以来初タイトルのペトロビッチ監督と2人で掲げた。師への何よりの恩返しになったが「負けたくない」という気持ちには変わりはない。阿部は「まだ次節新潟戦もある。何も終わっていない」と表情を引き締めた。優勝決定直後の円陣。阿部は同僚に言葉をかけた。「いいか、ここがスタートだ」。【塩畑大輔】

<浦和記録的優勝アラカルト>

 ▼初の無敗優勝 開幕から11勝5分けの16戦負けなしで優勝。無敗での優勝は史上初。1敗でのステージ優勝は、00年第2Sの鹿島、01年第1Sの磐田、02年第1Sの磐田、04年第1Sの横浜と過去に4例。いずれも優勝決定節までに1敗していた。02年第1Sの横浜も1敗でステージを終えたが、磐田が優勝し結局2位だった。

 ▼開幕からずっと首位 3月の第1節から1度も2位以下に落ちることなく優勝。開幕節から首位をキープし続けての優勝は、01年第1Sの磐田(全15節)以来、14年ぶり2度目。

 ▼ホーム全勝優勝 次節27日の新潟戦(埼玉)で勝てばホームで9戦全勝。すべて90分試合でのホーム全勝優勝となれば、01年第2Sの鹿島(8戦全勝)以来、14年ぶり2度目となる。