川崎フロンターレがMF阿部浩之(27)の25メートルミドル弾でサンフレッチェ広島に競り勝ち、暫定5位に浮上した。後半11分。ペナルティーエリアの左外でこぼれ球を拾った。相手DFを引き連れて裏へ走るMF中村の姿が見えたが、パスではなく、迷わず左足を振り抜いた。左へカーブがかかり、ゴール左隅に突き刺さった。

 阿部は「前半シュートを打てていなかったので、思い切り打とうと。自分の得意の形」と胸を張った。記録に残らない“アシスト”となった中村は「これで決めていなかったら(阿部に)何を言ってたか…」とジョークを飛ばしながら「阿部ちゃんのスーパーゴールに助けられた」と賛辞を贈った。

 今季、G大阪から移籍したばかりだが、これでチーム最多の5得点。本人は「前にいいパスが来るので」と謙遜するも、チームメートはフィットの理由を「練習中から、分からないことは積極的に聞いているし、常にお互いどうしたらやりやすいか、コミュニケーションを取っている」と、その努力を明かす。関西人の明るさも重なり、新加入とは思えない“存在感”を発揮。試合後は、チームでいじられ役のGK新井の名を挙げ「毎日、素晴らしいGKと練習しているからシュートがうまくなりました」と笑わせた。

 2月に右脛骨(けいこつ)骨折で離脱していたDFエウシーニョ、右ふくらはぎの張りで4日の横浜戦を欠場していた司令塔の大島も復帰した。中村は「勝ち点3はいろんなものをもたらせてくれる」と振り返った。アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)を含め、厳しい戦線を前に、頼もしい戦力が整った。【岩田千代巳】