ベガルタ仙台はアウェーで川崎フロンターレに1-3と敗れた。1勝1敗だが2戦合計4-5となり、敗退が決まった。

 0-2で迎えた後半14分に、今季初めてシャドーに入ったMF中野嘉大(24)がゴールを決めるも、同45分に3失点目。ロスタイム6分間で得点を奪えば延長戦の可能性もあったが、力及ばず。だが初の4強入りとクラブの歴史を塗り替えたことに変わりはない。

 試合終了を告げるホイッスルが鳴り響くと、仙台イレブンは「挑戦」が終わった現実を突きつけられた。FW野沢は座り込み、DF蜂須賀はあおむけに倒れ込んだ。渡辺監督は「私の力がもう少しあれば同点に追いつけたし、(決勝の舞台)埼スタに連れて行けた」と唇をかんだ。

 チャンスはあった。相手DFが警告2枚で退場となり、数的有利となった。その7分後、中野が反撃のゴールを決めた。以降の戦い方を渡辺監督は「選手は攻め込むことはできたが、私がコントロールできなかった」。交代選手やフォーメーション変更がかみ合わない中、カウンターから痛恨の3点目。MF三田は、仙台が退場者を出してから2点目を喫した第1戦と比較し「相手は退場者が出ても点を取って次につなげた」と悔しがった。

 渡辺色を前面に打ち出した挑戦だった。就任2年目の途中から「自分たちがボールを握ることで主導権を握る」サッカーを目指した。先勝を気にせず、この日も自陣に引くことなく、激しい攻防を繰り広げた。ボール支配率は55%。生命線のサイド攻撃からチャンスをつくった。強化費や経営規模が小さい地方のクラブでも、「自分たちの哲学、ポリシーを持ってやれば」タイトルが取れることを証明したかった。その姿勢は、サポーターの目に焼き付いたはずだ。

 チームは満身創痍(そうい)だった。相次ぐ負傷者で、直前まで遠征メンバーは17人。だが強化部や所属先の協力で、7日に関東大学リーグ戦に出場していた特別指定選手のFWジャーメイン良(22=流通経大4年)を緊急招集した。そんな厳しい状況でも、強豪と競り合った。「チームは成長しましたよ。でもこれで満足するつもりはさらさらない」。初タイトルへの挑戦は、これからも続く。【秋吉裕介】