2018年、飛躍を目指す清水エスパルスFW北川航也(21)が、日刊スポーツの単独インタビューに応じた。昨季は26試合出場で、チーム2位の5得点をマーク。手応えと反省のシーズンだった。今季は主力として、地元を背負って“闘う”意気込みを語った。【取材・構成=保坂恭子】
雲ひとつない青空の下、北川が、2018年シーズンへの思いを語った。
「1年をどう充実させるかは、自分の意識次第だと思っています」
清水ユースからトップに昇格し、今年で4年目。チームを支える中心選手になった。昨季はリーグ戦26試合出場で5得点。終盤6試合は先発出場した。
「いろいろ考えて変えたので、いいシーズンだったかなと思います」
転機を迎えたシーズンだった。3月、練習中に負傷。「重傷かもしれない…」と暗い表情で不安を吐露した。「左内転筋肉離れで全治7週間」。プロ入り後、初めての大ケガだった。支えになったのは、「師匠」と慕うGK六反勇治(30)だった。昨季ベガルタ仙台から新加入した守護神は、水や食事、練習前の準備まで徹底してこだわる選手だった。
「ケガをいかに無駄にしないか、という考え方になりました。変わるきっかけになったので、良かったかなと思います」
六反に、プロとしての心構えを説かれた。糖質を気にして大好物のカレーもケーキも、シーズン中は口にするのをやめた。
復帰後、全体練習前の早朝から、六反と体幹トレーニングを重ねた。5月のルヴァン杯では3試合先発出場で2得点。「コンディションが良くなった」と思っていたが、1カ月後、体が一気に重くなったように感じた。ランニングも、シュートも、感覚が異なった。
六反に「体幹トレーニングをやめて、体を元に戻したい」と告げると、すぐに諭された。「ここでやめたら、ケガをする前やこれまでと同じだ。やり続けないと先がない。我慢してやってみるのはどう?」。
提案を受け入れ、継続を決心。8月以降、コンディションは急上昇した。
「練習とかランニングをやっていくと、自分のコンディションに徐々に合ってくる。たくさん負荷をかけて、1度体を重くしてから慣らしていくと、ベストになる。昨年はそれを学ぶことができました」
ストライカーとしての手応えは、9月9日、アウェー甲府戦(1-0)で得た。後半25分、MFミッチェル・デューク(26)のヒールパスを胸でコントロールし、右足でゴール。連敗を3で止めた。
「その試合から吹っ切れて、自分が出せるようになりました。積極的になればボールは自分の前に転がってくる。何かをつかめた感じがありました。ストライカーとして、チームの一員として、やっていると自分でも分かりました」
昨季は2度、悔し涙を流した。1度目は10月14日、ホームでの静岡ダービー。0-3で完敗した直後、ピッチで顔を覆った。「この借りは、次に必ず返す」。強い思いもわいてきた。
「エスパルスのために戦っているけど、ジュビロを倒すためにもプレーしないといけない。やられたら、やり返す。また対戦できると思うと楽しみです」
2度目は、ホーム最終戦新潟戦(2-3)の後だった。自身も追加点を挙げ、2点をリードしながらの逆転負け。現役引退を表明していた下部組織の先輩、杉山浩太氏(32)を勝利で送り出せず、セレモニーで感情を抑えられなかった。
翌日の練習後、珍しくメディア対応を断った。「今日はちょっと…」。足の治療もあったが、気持ちの整理ができていなかった。J1残留争いから抜け出せず、残り1試合。ふがいなさを抱きつつ、チームへの情熱がほとばしっていた。
「自分が話すことはないと思いました。話すより、今できることをやりたかった。(メディアに)話すことは、プロ選手として仕事だし、大事だと分かっているけど、最終節神戸戦まであと4日しかなかった。その1試合に、すべてを懸けたかったんです」
12月2日のアウェー神戸戦。1点を追う前半19分に直接FKを決めた。公式戦では初めてのFK。実は1年を通じて練習を重ね、自信はあった。新たな能力を見せつけた瞬間だった。
「感覚はつかめていた。今年も、練習は続けようかなと思っています」
苦しみ、悩みながらもJ1残留に貢献。今年の目標は「闘う」にした。相手だけでなく、自分と闘う意味を込めている。
「チームとしても、個人としても、闘わないといけないと思っています」
清水は今季、ヤン・ヨンソン新監督(57)が率いる。また、ゼロから定位置争いが始まる。
「先発で出る試合を増やしたい。どの監督にも使われる選手じゃないと、やっていけない。新しい監督に順応できるようにしたいです」
海外のメディアからは「次の岡崎慎司(31=レスター)」として注目されている。昨季得た手応えと悔しさを胸に、北川が2018年を戦い抜く。
◆北川航也(きたがわ・こうや)1996年(平8)7月26日、静岡市生まれ。兄の影響を受け、5歳からサッカーを始める。清水ジュニアユースからユースを経て、15年にトップチーム昇格。J1初出場は15年5月23日アウェー湘南戦。初得点は同年11月22日アウェー甲府戦。J1通算33試合出場6得点。J2通算30試合出場9得点。180センチ、74キロ。家族は両親と兄、妹。血液型O。