上田西(長野)が3-2で明秀学園日立(茨城)を破り、県勢初の4強進出を果たした。国見時代に小嶺監督(現長崎総合科学大付)から指導を受けた白尾秀人監督(37)の鍛え上げたチームが、序盤の失点を3得点ではね返した。今日6日の準決勝では、同じく小嶺監督を恩師と仰ぐ山田監督率いる前橋育英(群馬)と対戦する。

 上田イレブンは落ち着いていた。前半12分、先制点を許しても「これで落ち着く」と動じない。DF大久保主将を中心に円陣を組み「全然大丈夫」。以心伝心でベンチとピッチがつながっていた。16分に大久保がPKを決めて同点、23分に左CKをMF宮下が直接決めて逆転。終盤に1点差とされたが、ゴールを死守して県勢初の4強入りを果たした。

 試合後のインタビュー。それまで笑顔の白尾監督が「良かった…」と言っていきなり泣きだした。後は言葉に詰まる男泣き。鹿児島・与論島で生まれ、長崎・国見で鍛えられ、甲府などで活躍した元Jリーガーは長野・上田の地で指導者として大きな成果を上げた。

 策をもってチームをまとめてきた。夕食後は選手のスマホを没収。ゲームの時間を選手同士の会話に充てようとの思惑があった。冬場のインターバル走では1キロ3分30秒のハイレベルなタイムを設定。90秒のインターバルで6本。そのうち3本のタイムクリアを課した。これは小嶺監督が国見時代に選手を鍛え上げた、たぬき山の強化走(往復12キロを40分以内)がヒント。白尾監督は「上田西バージョンとして参考にさせていただきました」と明かす。

 最後まで走力が落ちないチームは京都橘、帝京大可児(岐阜)明秀学園日立を次々と撃破して、優勝候補の前橋育英戦にたどり着いた。白尾監督が以前赴任していた野沢南時代には0-15で大敗、大きな壁となった名門だ。「目指すは全国制覇、それは常に生徒に言ってきました」。悲壮感も力みもない。白尾監督の思惑通り、イレブンもその気になっている。【井上真】