全国高校サッカー選手権は今日8日、埼玉スタジアムで決勝が行われ、昨年準優勝の前橋育英(群馬)と昨夏の全国総体との2冠を狙う流通経大柏(千葉)が激突する。前橋育英は3回戦で右膝を負傷し、2試合欠場したMF田部井涼主将(3年)が先発で試合復帰。双子の兄、MF田部井悠(3年)との共演で、初優勝を狙う。前橋育英は7日、さいたま市内で最終調整した。

 田部井ツインズの2度目の挑戦が始まる。右膝負傷で準々決勝と準決勝を欠場した弟の涼が最終調整でチームに復帰し、ミニゲームなどで軽快な動きをみせた。信頼を置く主将の復活に山田監督は「いけると思います。彼がピッチにいるかいないかは全然違う」と先発起用を明言。兄の悠との共演が濃厚となった。双子が2年連続で決勝に出場すれば、首都圏開催となった76年度大会以降では初めて。涼は「やれます。悠と一緒にやりたいし、今度は優勝したい」と意気込んだ。

 小学校からずっと同じチームで、前橋育英では弟の涼が主将で悠が副主将。互いに「自分を一番理解してくれている」と言い切る。FKでは左利きの涼と右利きの悠がキッカーとして並ぶことがあり、左右のCKも双子で蹴り分ける。自宅ではベッドを2つ置いた12畳の部屋を共有。中学入学時に両親から仕切り壁を作ることを提案されたが、悠が「別に分けなくてもいい」と断った。常にミーティングができる環境にある。

 そんな仲良し兄弟にも前回決勝の悪夢は重くのしかかった。青森山田に0-5で敗戦後、自宅に戻ってもショックで会話をかわせず、普通に話せるまでに1週間を要した。涼は「新チームの主将として、気持ちを切り替える時間になった」と振り返る。もう同じ思いはしたくない。悠は「去年の悔しさがあったからここまでこれた」。ここ4大会で3度目の決勝。歴代OBがかなえられなかった初優勝へ、2人の、チームの思いをこの一戦にぶつける。【松尾幸之介】