J3アスルクラロ沼津MF菅井拓也(26)が強い決意を胸にピッチに向かう。チームは明日11日、アウェーでFC東京U23との開幕戦を迎える。今季から主将に就任した菅井はボランチとして先発が濃厚で「チームが勝てるように全力を尽くしたい」と、少ない言葉に闘志を込めた。

 「3月11日」。毎年、この日が近づくと、つらい記憶がよみがえってくる。宮城県出身の菅井は仙台大1年時の2011年3月11日に東日本大震災で被災。練習中に強い揺れに襲われた。自身と母や姉弟は無事だったが、父勝己さん(享年47)が津波に流され、発生から約1週間後に遺体で見つかった。大切な家族を失った深い悲しみで一時は「サッカーをやめようと思った」という。

 それでも、自身を奮い立たせ、大学卒業にJFLのヴァンラーレ八戸に加入。活躍が沼津関係者の目に留まり、父との約束でもあったJリーガーになる夢をかなえた。3月11日は菅井にとって特別な日だ。「サッカー選手は何かを発信できる立場。多くの人にスタジアムにきてもらい、自分が全力でプレーしている姿を見て何かを感じてほしい」。

 チームはJ3参戦初年度の昨季、3位と大躍進した。今季、悲願のリーグ制覇を成し遂げるために開幕ダッシュを狙っている。菅井は「いい結果を出せるように全ての力を出し切りたい」と言った。震災から7年。被災地と天国で見守る父に勝利を届けるために、ピッチを走り続ける。【神谷亮磨】

 ◆菅井拓也(すがい・たくや)1991年(平3)8月2日、宮城県生まれ。聖和学園(宮城)-仙台大を経て、JFLのヴァンラーレ八戸に入団。同クラブで3年間在籍し、17年から沼津に加入。双子の弟慎也(26)はJFLのソニー仙台でプレー。170センチ、67キロ。