雷を伴う大雨によって、試合開始が30分遅れた。このアクシデントによってほほ笑むのは、どちらか-。答えは、セレッソ大阪だった。

浦和レッズのベンチには、オリベイラ監督がいなかった。

前節の名古屋グランパス戦に1-4で大敗した後、中継した「DAZN」のインタビューで開口一番「名古屋にはジョーだけではなくニシムラという、いいFWがいました。彼には9番が似合うかもしれません。ジョーだけでも非常に難しい相手なのに、名古屋の得意なところでFKを与えようと決めていたかのように、同じところで笛を吹いていました。私たちの武藤が倒されても笛は鳴らなかったですし、全てが逆に吹かれていたような気がします。名古屋が点を取るまでFKを与え続けたような印象でした」とまくし立てて、主審を務めた西村雄一氏を公然と批判した。これが主審を侮辱する発言だと規律委員会に判断されて、このC大阪戦と16日の横浜F・マリノス戦の2試合でベンチ入り停止の処分を科された。

代わりにピッチ上でテクニカルエリア内に出て指示を出したのが、大槻毅ヘッドコーチ(HC)だった。

大槻HCは、オリベイラ監督が就任する前に監督代行を務めて、公式戦6試合で4勝2分けと不敗を誇った。その期間だけ髪形をオールバックにし、そのいかつい風貌はネット上で“組長”などとして話題にも上ったほど。その“伝説の組長”が試合前に紹介されると、会場は大歓声に包まれた。

開始早々、浦和には再びアクシデントが襲った。前半4分に、駆け上がってクロスを上げようとしたFWファブリシオが、左足を着いた際に膝を負傷。1度はピッチに戻ったがすぐに座り込み、同8分に交代を余儀なくされた。

だが、災い転じて福と成す-。それは4分後の前半12分だった。自陣からのカウンター攻撃で、MF武藤雄樹から左サイドのDF宇賀神友弥に渡ると、中にカットイン。粘って託したのが、ファブリシオに代わって入ったFW李忠成だった。ワントラップして左足を振り抜くと、ボールはゴール左へ。先制ゴールは浦和に生まれた。

実はC大阪も、試合前からアクシデントに見舞われていた。日本代表にも選ばれているMF山口蛍が試合前日に右膝を痛めて、遠征メンバーから外れた。

だが、もう1人の日本代表が輝く。前半29分、中央で競り合ってこぼれたボールをFW杉本健勇が左足ボレー。これが中へのクロスとなって、MFオスマルが反応して押し込んだ。杉本のアシストで同点に追いついた。

そして、後半8分にはMFソウザが右に切り返してから、目の覚めるような弾丸シュートで勝ち越しに成功した。

杉本は後半26分に抜け出してGKと1対1のチャンスを迎えたが、これは右に外れた。それでも、逃げ切り、連敗をしなかった。

浦和は3試合で9失点と守備が安定せず、今季3度目の2連敗となった。雷雨のため監督代行時代と違ってスーツ姿ではなく、さらに帽子も被っていたからなのか。大槻HCの“不敗神話”も、最後まで強く降り注いだ大雨に打ち消されてしまった。