経営再建中の大分トリニータが、6季ぶりのJ1復帰を果たした。前半18分、MF星雄次(26)が、右サイドからドリブル突破したMF松本怜(30)のパスを「うまく崩し(ボールが)流れて来ると思った」と、右足を合わせて先制。後半ロスタイムに追いつかれ、優勝こそ逃したが、横浜FCと勝ち点76で並んで得失点差で上回り2位で自動昇格を決めた。

Jリーグ史上初となる16年J3からのJ1復帰に喜びもひとしおだった。就任3年目の片野坂知宏監督(47)は控室で選手に「おめでとう」と声をかけ泣いたと言い「今日、笑顔で終われて良かった」と安堵(あんど)した。

指揮官の座右の銘は「七転び八起き」。鹿児島実時代に培った校訓、不撓(ふとう)不屈の精神で苦労や困難に立ち向かった。元同校監督の名将、松沢■司監督(享年76)と亡くなる前の17年4月に会った際「お前らしいサッカーで頑張ってるな」と激励され糧にしてきたという。J3からの指揮だったが、持ち前の負けん気で超攻撃的チームを育て、今季J2最多76得点で席巻した。

大分は09年、深刻な経営難からクラブ消滅危機に陥ったが、Jリーグの6億円緊急融資を受けて回避。しかし、J1復帰は融資完済が条件だったため、徹底した赤字体質改善のあおりで日本代表GK西川周作(32)、DF森重真人(31)、MF清武弘嗣(29)ら主力が大量流出。チームも弱体化した経緯がある。

そんな逆境下、12年10月に県民の寄付や地元政財界の支援でJリーグに未返済だった残り3億円を返済、奇跡のJ1昇格を果たした。一方、最大約11億円にのぼった債務超過は14年5月に解消。だが、いまだ債務超過解消へ出資を受けた企業再生ファンド株の買い取りを進めているところだ。

経営再建途中の影響で来季は予算約11億円の予定。リーグ最低クラスの選手年俸で戦うことになるが、どん底に落ちた屈辱を糧に高みを目指す。

※■は隆の生の上に一