名門東京ヴェルディ(J2の6位)が、08年以来11季ぶりのJ1復帰に王手をかけた。J1参入プレーオフ2回戦で、横浜FC(J2の3位)とアウェーで対戦。0-0で迎えた敗退濃厚の後半ロスタイム、右CKからGK上福元直人(29)のヘディングシュートのこぼれ球に、FWドウグラス・ヴィエイラ(31)が詰めて劇的ゴール。土壇場でJ1への挑戦権をもぎ取った。8日にジュビロ磐田(J1の16位)と決定戦(ヤマハ)を戦う。

ストライカー顔負けのヘディングシュートでJ1復帰への望みをつないだ。7分の後半ロスタイムが6分を回ったころ、右CKのチャンスでGK上福元がゴール前の集団に加わった。後方に陣取り、MF佐藤が蹴ると、猛然とゴール前に走った。「自分の方に真っすぐ飛んできた」。ドンピシャで頭に当てたシュートは1度はGKにセーブされたが、こぼれ球をFWドウグラス・ヴィエイラが押し込んだ。得点を確認すると両手を広げて喜び爆発。ピッチに突っ伏すと次々と仲間から祝福を受けた。

満を持しての攻め上がり、ゴールだった。歓喜の決勝点が生まれる約4分前の左CK。迷わずゴール前に向かおうとしたが、まだ残り時間が約5分あり、ロティーナ監督に止められた。「チームの力になりたかった」。諦めず、再び訪れたCKのチャンスでも猛アピール。ベンチからGOサインが出てゴール前に上がると、すぐさま結果に結びつけた。

自信はあった。「自分はそんなにヘディングで決められる選手じゃない」。謙遜するが、チームではGKも、空中に浮いたボールに頭で合わせるシュート練習などを行っていた。14年の昇格プレーオフ準決勝の磐田-山形戦で山形GK山岸が後半ロスタイムに決めたヘディングシュートもインプット済み。「決まらなかったので、自分はその程度かと思いました」と笑わせたが、強烈ヘッドでチームを救った。

J2の6位からの下克上。緑の名門は、あと1勝すればJ1昇格という舞台まで来た。相手は4年前にその山形が下した磐田だ。福の神となった、上福元は「(プレーオフの)2試合で積み重ねてきたものを出せば勝てると思う」。ミラクルを起こす。その表情は自信に満ちあふれていた。【松尾幸之介】

◆上福元直人(かみふくもと・なおと)1989年(平元)11月17日、千葉県生まれ。市船橋-順大をへて12年大分加入。町田-大分と移籍し、今季東京Vに加入した。J2通算88試合出場で、今季は42試合。試合前にゴールポストにあいさつをするのがルーティンで、座右の銘は「苦難の嵐こそ成長の追い風」。目標の選手はバルセロナの守護神テアシュテーゲン。182センチ、76キロ。血液型B。