大腸がんのため11月23日に63歳で死去した清水エスパルスの副社長兼ゼネラルマネジャー、久米一正氏の告別式が4日、東京・増上寺で営まれ約500人が訪れた。前日本代表監督の西野朗氏(63)があいさつ。ライバルとして、戦友としてともにサッカーに生きた久米氏を悼んだ。

マイクの前に立った西野氏はまっすぐ、遺影に目を向けた。「お前ほど元気で、エネルギッシュで、タフな男はいないと思っていました」。高校、大学でしのぎを削り、日立でともにプレー。引退してからも久米氏に請われて柏と名古屋で監督に。紙は持たず、語りかけるように続けた。「お前だけは不死身なんじゃないかと思っていました」。

亡くなった日、西野氏は病室にいた。「もう1回、一緒にボールが蹴りたいと、お前の黄金の左足を手でさすって」。苦しそうな表情を浮かべる戦友を懸命にマッサージ。「お前を、よみがえらせたくて」。願いはかなわなかった。「あの時のマッサージ代、今日の帰りにもらっていきます。お前は踏みたおして…。また会おう、今度払うから、といった顔をしていたにもかかわらず、払ってもらえないので」。

会場に置かれた写真の中には西野氏の家にあったものも。久米氏が訪れるたび「この写真が一番好きなんだ」と話していた1枚だった。「お前と会えてよかった。これからは見守ってくれ。本当にありがとう」。視線は最後まで揺れることなく、久米氏の笑顔に向けられていた。【岡崎悠利】