今季限りでの現役引退を発表した鹿島アントラーズの元日本代表MF小笠原満男(39)が28日、ホームのカシマスタジアムで会見を行った。報道陣約80人を前に語ったのは、海外でプレーした1年を除き、現役生活の全てを過ごしたアントラーズへの強い愛。引退後もクラブに残り、チームを強くするためにできることを探していく。

小笠原の目に迷いはなかった。やや緊張しながらもすっきりとした表情で、引退理由を「試合に出る機会が少なくなり、ピッチの上でチームを勝たせることができなくなった」と説明。膝のケガを理由にせず「出番を失ったのは自分の実力不足」と言い切った。

「試合に出てチームを勝たせる」。小笠原にとってそれが全てだった。以前から「ピッチで活躍できなくなったら引退する」と決めており、ベンチに入れなくなった夏ごろから、本格的に考え始めたという。今季フル出場したリーグ戦はわずか6試合。シーズン終盤はけが人も続出し出番を得たが「若いやつが出るべきだと思った」と後輩の成長を優先した。「サッカーが大好きだしアントラーズが大好きだし、まだまだやりたい気持ちがあるのが正直なところ」としたが、それでも「迷いや葛藤はなかった」と、現実を受け入れた。

モチベーションは、鹿島で同期の曽ケ端準、中田浩二、本山雅志や、99年ワールドユース選手権(現U-20ワールドカップ)でともに準優勝を経験した小野伸二、稲本潤一ら、79年生まれの“黄金世代”だった。「彼らに負けたくないという思いでやってきた」と明かし、「まだまだ(現役で)頑張ってほしい」。「先に辞めるのは悔しいか?」と聞かれると「いや、自分の完敗です。最初から最後まで勝てなかった」と潔く認めた。

現在指導者ライセンスは保持していないが、今後はクラブと話し合いながら、チームのためにできることを模索していく。記者から「引退後やりたいこと」を聞かれても「いや、それよりも早く働きたいっす」と小笠原。「早くチームに貢献したいし、本気でアントラーズを強くしたい。飲み食いしてる場合じゃない。そうもしている間に、世界のサッカーはどんどん発展していく」と襟を正すと、新たな目標に向かって歩き始めた。【杉山理紗】