元バルセロナ所属でサガン鳥栖に新加入したMFイサック・クエンカ(27)が来日初ゴールで今季初勝利に導いた。

後半36分に途中出場すると、あこがれの元フランス代表MFジダンの「マルセイユ・ルーレット」をほうふつとさせるターンなど、個人技で攻撃の起点となった。迎えた同ロスタイム2分。相手DF2人に阻まれながらクロスに合わせ「1部リーグでは人生初」というヘディング弾を決めた。

開幕直前の練習中に右足首を痛め1、2戦はベンチ外だった。だが3戦目のFC東京戦からの途中出場で、徐々にコンディションを上げつつあった。万全でなかっただけに喜びもひとしおだ。「うれし過ぎて何も考えられず、ただ喜んで走った」と、ゴール裏のサポーター席へまっしぐら。駆けよった選手やスタッフらにもみくちゃにされた。期待される元スペイン代表FWフェルナンドトーレス(34)とのスペイン人ホットラインは見られなかったが、名門クラブ出身の能力の高さを示した。

攻守の要を欠く大ピンチを救った。ルイス・カレーラス監督(46)が「(右)足外の筋肉の部分を痛めているようだ」という違和感で、後半6分にフェルナンドトーレスが負傷交代。同17分にはDF高橋祐治(25)が、この試合で警告2枚目となり退場となった。それでも指揮官は「試合をコントロールする時間を増やすためだった」と、かつてスペインのサバデル時代の師弟関係で能力を知るクエンカ投入で勝負に出た。本人も「出たら必ず(点を)取る思いだった」。執念で劇的勝利を引き寄せた。【菊川光一】