16年に急性白血病を発症したJ2アルビレックス新潟のDF早川史哉(25)がホームでの鹿児島ユナイテッドFC戦にフル出場し、復帰した。

リーグ戦出場はJ1だった16年3月12日横浜F・マリノス戦(デンカS)以来3年7カ月ぶり。公式戦出場は同年3月27日のナビスコ杯(現ルヴァン杯)サガン鳥栖戦以来、1287日ぶりだった。競泳女子の池江璃花子らも闘病する白血病を乗り越えた不屈のDFの復帰戦を、クラブ史上2位タイとなる大量得点、6-0の快勝で飾った。

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スタジアムが沸騰した。DF早川がボールを持つと、1万2583人が沸く。前半3分に右サイドを駆け上がる間は拍手と歓声。「(交錯した足に)しびれがきたけど、幸せな痛み。これが戦うことだと思った」。約3年7カ月ぶりに味わう真剣勝負のうれしさを明かした。

大卒新人として加入した16年4月に急性白血病を発症。抗がん剤治療を経て骨髄移植手術、長い闘病生活から徐々に体を慣らし、慎重に復活のステップを踏んできた。ついに迎えたこの日、19年10月5日。「大きな1歩を踏み出せる。これから欲も出てくるだろう」と手応えも得た。

ラグビーワールドカップ(W杯)日本代表で親交のあるプロップ稲垣啓太(29=新潟工卒)からも刺激を受ける。J開幕前には新潟市内で食事もし「コンディションの整え方、代表としての心構えなど聞いた。あの体なのにすごく動ける。こっちも頑張ろうと思う」という。その稲垣は大事なサモア戦前にツイッターで「フミヤ頑張れ!!」とつぶやいた。今はあえて連絡を取っていない。「W杯が終わって会うつもり」。ともにいい報告が出来ることを楽しみにする。

8月17日のホーム・ファジアーノ岡山戦で初めてベンチ入り。前節はメンバーから漏れたがDF新井が「アクシデントのため」(吉永一明監督)に出番が巡ってきた。「緊張で試合中はバタバタしてしまった。視野が狭くなったり慌てたりした」というが、復帰が呼び水となり、6-0の圧勝。「今日は両親の結婚記念日。『頼むよ』と言われた。両親には感謝したい」。そう話す時、早川は涙声になっていた。【涌井幹雄】

▽筑波大・小井土監督(早川の恩師) 彼の過ごしてきた時間を思うと、本当に良かった。徐々に良くなって来た時に筑波に来てくれたりした。サブに入った時、連絡したら「これからです」と言っていた。いろんな人を勇気づけられる選手。僕らも負けないようにやらなくては。