連覇に挑む青森山田が3-2で昌平(埼玉)を退け、11日に埼玉スタジアムで行われる帝京長岡(新潟)との準決勝進出を決めた。MF浦川流輝亜(るきあ、3年)が前半10分に左足で蹴りこみ先制。2-0の同ロスタイムにも、左クロスをゴール前に走り込んだMF武田英寿(3年)の頭に合わせ、1得点1アシストで勝利を導いた。

30大会ぶり8強進出の仙台育英(宮城)は0-1で帝京長岡に敗れ、準決勝の東北勢対決はならなかった。

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169センチの小柄なサイドアタッカーMF浦川が大きな仕事をやってのけた。前半10分、右からのグラウンダークロスに利き足とは逆の右足を振り切った。1度は相手GKに防がれたが、こぼれ球を今度は左足で狙った。ゴール右ポスト内側に当たってネットを揺らすと、両手を突き上げて仲間と歓喜。「アップの時から右足の調子が良かったので右で打とうと思った。右では決まらなかったけれど、その後も落ち着いてキーパーと守備の位置も見て蹴れました。先制点は大きかった」。チームを勢いづける一発は、努力の結晶だった。

本来は左利き。日本一に輝いたプレミアリーグで黒田剛監督(49)からのゲキが意識を変えた。右足なら追いつけるボールに左足を出し、マイボールを失った。「今のチームはサイド攻撃が生命線。監督から『今のは右でいけよ!』の言葉は忘れていません」。昨年度の主力で両足のキックを武器にしたMFバスケス・バイロン(現いわきFC)と比較される悔しさを糧に、自身の短所を解消した。

自主練習では、この日2点目を奪った右サイドMF後藤健太(3年)と左右両足でクロスを上げ続けた。左サイドからカットインしての右足シュートも繰り返した。ロスタイムには左サイドでロングパスを受けると、得意の左足でピンポイントクロス。決勝点も浦川が生んだ。

昨年度はベンチ入りしながらも、ピッチに立てなかった埼玉スタジアム。「夢見てきた舞台。自分の仕事のハードワークとクロスボールでチャンスを作りたい」。左右二刀流とプレーの幅が広がった自信もある。後半にパスミスなどから中央を突破された2失点は大きな課題となったが、黒田監督も「反省点も出来て次の試合に臨めることはありがたいこと」とプラスに捉える。浦川がサイドから起点となり、連覇を導く。【鎌田直秀】