2009年度全国高校サッカー選手権で初出場の藤枝明誠をベスト8に導いた田村和彦・静清高監督(59)は、本年度で定年を迎える。同校は今月1日から段階的に部活動を再開。約2カ月ぶりの全体練習を指導した田村監督の表情にも、充実感がにじみ出ていた。ただ、新型コロナウイルス感染拡大の影響で所属する県Cリーグは開催できず、県総体も中止が決定。やり切れない思いは選手と同じだ。田村監督は「この状況は全世界で同じ。仕方がないこと」と、一定の理解を示した。

残された大会は、今秋の県選手権だけとなった。選手にとってはあこがれの舞台で、集大成となる大会。指導者も同じだが、過去の経験で考え方が変わったという。19年間指揮した藤枝明誠監督時代の09年度に、同校を初の全国選手権出場に導いた。「確かに感慨深いものはあったけど、選手権だけに出ることが最終目標になってはいけないと感じた」と振り返った。

現時点で県選手権の開催は不透明。状況次第では中止の恐れもある。「選手権に全てを懸けるというのは少し違うと思う。あくまでもそこは通過点だし、将来どこを目指すかが大事。それは選手だけでなく、指導者も同じだと思う」と田村監督。県選手権が中止になっても、選手にサッカーを教えるという原点は変わらない。

指揮官にとって、今年は節目の1年。予期せぬ事態に「よりによって」と苦笑いするが、既に前を向いている。今月末には練習試合を行う予定で「今はやれることをやって、準備しておきたい」。県選手権を見据え、今は地道にチーム作りを進めていく。【神谷亮磨】

◆田村和彦(たむら・かずひこ)1960年(昭35)12月22日、磐田市生まれ。藤枝・青島東小5年でサッカーを始める。静岡大教育学部付属島田中、島田高を経て順大に進学。保健体育の教員資格を取得し、藤枝中など公立中で13年間教員を務める。96年に藤枝明誠高に赴任し、サッカー部監督に就任。15年からは静清高サッカー部の監督を務める。家族は夫人と1男1女。血液型A。