Jリーグ村井満チェアマン「いろんな意見があるんですけど、皆様をしっかり守っていくためにも頑張っていこうと思います。ぜひ力を貸してほしいと思っています」

 

3月9日、夜。村井チェアマンが急きょ報道陣に対応することになった。その日の午前には、日本野球機構(NPB)と合同で設立した「新型コロナウイルス対策連絡会議」の第2回会合に参加していた。

Jリーグは新型コロナウイルスの影響で2月25日に公式戦の中断を発表し、3月18日の再開を目標にしていた。だが、この日の会議で専門家チームから「延期が望ましい」という中間報告を出されていた。それを受け、全クラブと協議。「3月いっぱいの公式戦延期を決めました。4月3日の再開を目指して全力を尽くして努力していこうと申し合わせた」と断を下した。

9日夜の会見では、サッカーを日常に取り戻す日のために、4つのプロジェクト(試合日程、競技の公平性、観戦・環境対策、財務対応)を立ち上げることなどを明らかにした。村井チェアマンはいつものように理路整然と、具体策などを丁寧に示していった。

会見の終盤、村井チェアマンの表情に変化が生じた場面があった。質疑応答で「ファンへメッセージを」と聞かれると、しばらく黙り込んだ。何とか絞り出そうとした言葉も、詰まった。少し呼吸を整えて発したのが、冒頭のメッセージだった。サポーターのためにもリーグ戦を早く再開させたいが、国民の健康が最優先なのは絶対に譲れない。見えざる敵の脅威を軽視することなく、断腸の思いで下した決断。組織のトップとして、延期を決断するまでの心情の揺れは想像に硬くなかった。目尻には、光るものがあった。

新型コロナウイルスの感染拡大もようやく落ち着き、5月25日には政府の緊急事態宣言も完全解除された。各クラブも全体練習を再開させ、サッカーが日常に緩やかに戻ってきた5月29日の実行委員会で、7月4日にJ1再開、6月27日にはJ2再開とJ3開幕を迎えることで合意した。