20日に引退を電撃発表した鹿島アントラーズの元日本代表DF内田篤人(32)が、現役ラストマッチとなったガンバ大阪戦を終えて引退セレモニーに姿を見せた。「カシマの誇り篤人の2を忘れない」など感謝の横断幕がひしめく中、まだ引かない汗をしたたらせながら再登場。ジーコ・テクニカルディレクターから花束を贈呈された。

そのままセンターサークルに歩を進めると、場内の大型ビジョンにビデオメッセージが流れる。高卒1年目の06年の開幕戦でいきなり先発起用してくれたアウトゥオリ監督、07~09年にJ1リーグを3連覇した時のオリベイラ監督からメッセージが届いていた。

続いてマイクの前に立つと「そんなたいした話しないんで、大丈夫です」と内田らしい言い回しで笑って切り出した。

「今日、僕はここでサッカー選手を引退します。えー何だっけな(拍手)。鹿島アントラーズというチームは、数多くのタイトルを取ってきた裏で、多くの先輩方が選手生命を削りながら勝つために日々、努力する姿を僕は見てきました。僕は、その姿を今の後輩に見せることができないと、日々練習していく中で体が戻らないことを実感し、このような気持ちを抱えながら鹿島でプレーすることは違うんじゃないか、サッカー選手として終わったんだなと考えるようになりました」

「もう一花、二花、咲かせたいと日本に戻ってきましたが、その中で隣に寄り添ってくれたトレーナー、まだやれると背中を押してくれたザーゴ監督、大岩前監督、いい時も悪い時もともに過ごしたサポーター、ファン、スポンサー、そしてチームメート、本当にありがとうございます」

「このようなシーズン、チーム状態で、僕の決断を理解してくださった強化部、監督、そしてチームメート、本当に申し訳ない。日の丸を背負ってプレーする重さも、殺気のあるドイツでのスタジアム、つらさも、うれしさも、すべて僕の財産です」

「もう少しだけ。この話を聞いているプロサッカー選手を目指す子供たち、サッカー小僧の皆さん、鹿島は少し田舎ですが、サッカーに集中できる環境、レベルの高さ、そして今、在籍している選手たちが君たちの大きな壁となり、ライバルとなり、偉大な先輩として迎え入れてくれるはずです。僕はそれを強く願います」

「最後に、サッカーを通じて出会えたすべての人たちに感謝します。また会いましょう」

時折、涙声になりながらも、最後までこらえ、あいさつを全うした。その後は愛する子供とともに場内をゆっくり1周し、チケット約5000枚が即完売したスタジアムに詰めかけたサポーターへ手を振って別れを告げた。

試合はベンチスタートだったが、0-1の前半16分に右サイドバック広瀬の負傷を受けてスクランブル出場。MF三竿からキャプテンマークを託されると、聖地カシマの雰囲気が一変した。途中で右膝のテーピングを巻き直しながらの、執念のプレーで攻守を活性化した。

その執念が実ったのが、1点を追う後半ロスタイム5分だった。内田が右足で繰り出したロングパスが起点となり、DF犬飼の同点ヘッドが生まれた。最後の最後に、元鹿島DF昌子らが居並ぶG大阪の守備陣を打ち崩した。かつてリーグ3連覇に貢献したように常勝軍団を勝たせて終わることはできなかったが、敗色が色濃かったチームを最後に救い、背番号2のユニホームを脱いだ。【木下淳】