欧州の小国からチャンスをつかむ。北斗市出身で元熊本MFの田島翔(37=函館工)が、イタリア半島中東部にあるサンマリノ1部リーグで昨季4位のSSペンナロッサに加入した。日本人選手の同リーグ加入は初で、7日に入国し、隔離期間を経て23日から合流する。早ければ1月9日のアウェーSPカイルンゴ戦でデビュー予定。03-04年シーズンにリーグ制覇したクラブで、17季ぶり優勝と、欧州チャンピオンズリーグ(CL)予選出場権獲得を目指す。

37歳田島が現役最後の勝負に出る。02年にシンガポールでプロ生活を始め、サンマリノで8カ国目。14年にはオセアニア王者オークランド加入も、12月に日本開催されたクラブW杯目前でインフルエンザに感染し出場できなかった。「選手として最後に1度、チャンピオンズリーグに出てみたい」と欧州各国のトップが競う大会を見据えた。

サンマリノは人口約3万人の小国。代表チームも世界ランク210位、欧州ランク54位の弱小国だが、1部リーグ優勝クラブには欧州CL予選に出場する権利が与えられる。クラブ目標も当然、17季ぶりのリーグ制覇と、欧州CL出場。地元選手はアマチュアが多く、田島らプロ契約の外国籍選手への期待は大きい。「なんとかチャンスを得られた。チームのために全力で臨みたい」と意気込んだ。

本来は指導者に転身するはずだった。今季は函館リーグ所属の地元クラブでプレーしながら、1月に自身のサッカー教室「フットライズサッカーアカデミー」を立ち上げた。新たな収入源と考えていたがコロナ禍で活動自粛。もう1度、選手として夢を追う決断をした。9月からペンナロッサ側にプレー動画と履歴書を送り11月、契約に至った。

12年に当時J2のロアッソ熊本に加入しJリーガーになる夢を果たした。その年、大好きなカズがフットサルのFリーグに参戦すると、自身も13年に同リーグのシュライカー大阪に加入。だが、選手として大きな実績を残せたわけではない。「まだ何も成し遂げていない」。最後に日本人がまだ誰も立っていない異国のピッチに立ち、大舞台を狙う。

アジア、欧州、オセアニア、米国と複数の大陸を渡り歩いた。「いろいろな経験や文化を知って、子どもたちに教えるときに、さまざまな角度からサッカーを伝えられたら」。最後まで全力で夢を追い続け、得た糧を次代のアスリートに還元していく。【永野高輔】

◆田島翔(たじま・しょう)1983年(昭58)4月7日、上磯町(現北斗市)生まれ。上磯中、函館工高を経て02年クレメンティ(シンガポール1部)でプロ生活スタート。琉球FC(九州リーグ)NKヴァルテクス(クロアチア2部)TSKロセス(スペイン5部)を経て、12年に当時J2の熊本加入。13-14年にFリーグ大阪でフットサル挑戦後、オークランド(ニュージーランド1部)十勝フェアスカイFC(道リーグ)マイアミユナイテッド、ラスベガスシティ(米国4部相当)ソウルユナイテッド(韓国3部)でプレー。家族は両親と姉、弟。168センチ、60キロ。利き足は右。

◆サンマリノ共和国 イタリア半島中東部に位置する。首都はサンマリノ。広さは約60平方キロメートルで十和田湖とほぼ同じ。世界で5番目に小さい国。17世紀にローマ教皇に独立を承認された世界最古の共和国といわれる。サッカーのサンマリノリーグ1部(カンピオナート・サンマリネーゼ)は15チームが2グループに分かれ競い、上位3チームがプレーオフ(ホーム、アウェー方式のリーグ戦)に進出。優勝チームが欧州CL予選に出場する。