ベガルタ仙台が長い長いトンネルからようやく抜け出した。後半23分、FW西村拓真(24)が値千金のゴールを決め、3連勝中の柏レイソルを1-0で撃破。8季ぶりに復帰した手倉森誠監督(53)体制でリーグ戦初勝利、19年11月30日の大分トリニータ戦以来518日ぶりとなるホーム白星を挙げた。今季は東日本大震災から10年の節目。この日の試合前には宮城県内で最大震度5強の地震が発生したが、動じずに開幕11戦目で待望の勝ち点3をつかんだ。

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試合終了のホイッスルが鳴り響くと4292人(チケット完売)のサポーターから湧き上がるような拍手が起こった。19年11月以来、518日ぶりの本拠地勝利。手倉森監督は「スリリングでエキサイティングなゲームの中から勝ち取った勝利だった」。クラブワーストを更新する開幕10戦未勝利ともがき苦しんでいたが、虎の子の1点を最後まで守り抜いた。

11年に4位、12年に2位とチームを躍進させた指揮官も開幕から勝利に見放された。試合前には「今日はいっぺん勝ってみせろ、いっぺん勝ったら状況は一変する」と、下を向かず、得意のだじゃれを交えながら明るく選手を鼓舞した。前半20分、FW赤崎がアクシデントで途中交代。柏に支配される展開を耐えしのぎ、後半23分にFW西村がワンチャンスをものにして、決勝点を奪った。

この日の午前10時半ごろ、宮城県内で最大震度5強を観測した。「試合前のミーティングをしようとしたときに(地震が)きました。2011、12年は(柏の)ネルシーニョ監督と戦って、あのころはホームでよく勝ったと、思い起こさせられたような地震ととらえました」と振り返った。

昨季は1度もホームで勝てず17位に終わった。ピッチ外でも数々の困難に見舞われた。昨年10月に元所属選手が知人女性へのDVで解雇された。20年度のクラブの債務超過は1億2400万円に及んだ。4月28日の試合後にはFW赤崎とサポーターとの間で誤解が生まれ、赤崎が謝罪する事案もあった。

試練を乗り越えての今季初勝利。手倉森監督は「何かの呪縛から解き放たれたような感覚。ここから新たなベガルタの始まりだととらえたい」と、東北を元気にする決意を口にした。【山田愛斗】

◆記録メモ 仙台がホームでの連続未勝利を20試合でストップした。ホームでの勝利は19年のホーム最終戦だった11月30日の大分戦(2-0)以来518日ぶり。Jリーグ公式によるJ1のホーム連続試合未勝利記録はこの日の対戦相手だった柏が14~15年に喫した22戦連続(10分け12敗)。仙台の20戦連続(8分け12敗)はワースト2位の不名誉な記録だった。