ガンバ大阪一筋25年の松代(まつよ)直樹GKコーチ(47)が、この日の試合を最後にクラブに別れを告げた。前日3日に今季限りでの退任の発表がされており、試合後はGK東口順昭(35)らとゴール前で記念撮影をした。背後からサポーターの温かい拍手が送られた。

退任理由の発表はなかったが、今季は成績不振で5月に宮本恒靖監督(44)が事実上の解任。その後を受けた松波正信監督(47)は完走こそしたが、13位と低迷した。来季は大分トリニータの片野坂知宏監督(50)が就任予定。前政権のスタッフが、そのまま居残れるほどプロの世界が甘くないのは、本人が一番分かっているはずだ。

天理大から97年にG大阪入りした松代コーチは、現役の13年間すべてを同じクラブにささげた。最後の試合は10年1月1日、天皇杯決勝で名古屋グランパスに4-1で快勝して日本一に導いての引退だった。

現役時は都築龍太ら常に代表級の正GKがいながら、入団6年目の02年に就任した西野朗当時監督に抜てきされ、その後は出場機会が増えていった。08、09年はチーム主将も務めた。J1通算131試合に出場。181センチ、73キロとサイズには恵まれず、脱臼などけがにも泣かされ続けた。それでも、これほど長く現役を続けられたのは、本人の努力のたまものだろう。

引退の翌10年から下部組織のコーチになり、18年から4年間、トップチームで指導してきた。教え子の東口は、この日の会見で「松代さんはGKとしての幅を広げてくれたし、毎日の練習が純粋に楽しかった。こういうGKコーチになりたいと思った。いろんなものを与えてもらった」と感謝の言葉を残した。

松代コーチの繊細な性格を表すように、手先も器用で趣味はガンダムのプラモデル作り。非常に細やかな指導で、いろんなGKを育ててきた。

G大阪以外のクラブを経験していないため、今後は違う環境で指導者になる可能性もあるだろうし、別の道に進むのかもしれない。松代コーチの別れのコメントはなかったが、最後までクラブの発展に尽力した姿は、我々の記憶に残り続けるはずだ。【横田和幸】