第100回全国高校サッカー選手権は8日、準決勝を迎える。セットプレーで、キッカーのボールに合わせる選手が円陣を組んでグルグルと回る“トルメンタ”で得点を重ねてきた高川学園(山口)は、優勝候補筆頭の強豪青森山田と対戦する。高川学園の必殺技・トルメンタを、有識者はどう見るのか? 横浜F・マリノスや浦和レッズなどで主にDFとして活躍し、現在はYouTuberとして活動する那須大亮氏(40)に聞いた。【高校サッカー取材班】

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セットプレーの守備は、大きく分けて2パターンある。1つは、選手ごとにマークする相手選手を決めた「マンツーマンDF」。もう1つは、ゴール前をゾーン分けして自身の守備範囲に入ってきた相手選手をマークする「ゾーンDF」だ。

セットプレーを生かした戦術“トルメンタ”は、何がすごいのか? 那須氏は戦術的側面に加えて、YouTuberとしてさまざまな高校に体験入部してきた経験から考察した。

<1>体格をカバーする工夫

身長180センチと、センターバックとしては決して大柄とはいえない那須氏。現役時代は、体格でかなわない選手相手にセットプレーで優位に立つために、工夫を凝らしていたという。

「高川学園にも同様のことが言える」と那須氏は話す。フィールドプレーヤーで最長身の選手は、那須氏と同じ180センチ。円陣を組んでグルグルと回転し、相手のマークを付きづらくすることで、単純な競り合いでは勝てない相手を上回る可能性を生み出しているという。

円になって回転することで、「全員が同じパワーで(ゴール前に)入るのは難しい。後ろ向き(に飛び込む)選手はパワーが出にくい」という難点も生じる。高川学園はリスクも承知の上で“トルメンタ”を確立させ、結果を残してきた。那須氏は「相手につかまれないことで、パワーを発揮できる。フィジカルなどいろんなところを考慮して、あの形に行き着いたんだと思う」と推測し、「僕は三半規管が弱くて、ああやって回ると目が回る。あの発想は自分にはなかった。思考の入り口は常に開いていないといけないと思わされた」と敬意を表する。

<2>中学生へのアピール

“トルメンタ”によって、高川学園の名は全国に広まった。那須氏はこれにも意味があると話す。

YouTuberとして全国の高校を回る中で、有力な選手に進学先として選んでもらうためには、その学校ならではの、何らかの“特化した要素”が必要だと感じたという。

その点、“トルメンタ”は分かりやすい。「1つの戦術の入り口として非常におもしろいし、(メディアなどから)そこにフォーカスしてもらうと、高校の今後、いい選手を獲得するところにもつながる。結果にもつながっているので、いい形なんじゃないか。議論になっていること、ネーミング含めて注目を浴びていること自体、成功の1つだと思う」と那須氏は話す。

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では、那須氏が相手DFだったらどう守るのか? 聞いてみた。

那須氏 (母校の)鹿児島実業では(セットプレーの守備は)マンツーマンDFだったので、周りを動かして、ゾーンDFに近い形を敷くかな。マンツーマンで、2人関係か、3人関係か、ゾーンDFに自主的にシフトチェンジしたかもしれないですね。

果たして、青森山田はどんな守備を構築して迎え撃つのか-?

◆トルメンタとは 高川学園が、セットプレーで駆使する奇策。FK、CKの際に中で待つ数人が円陣をつくり、手をつないだ状態でグルグルと回転しながら動きだす。山口県大会前に、FW中山桂吾(3年)が「マークが付きにくい」と考案。部室前のボードに貼ってあった磁石の形からヒントを得た。スペイン語で「嵐」を意味する言葉が語源。選手が運営する高川学園サッカー部の公式ツイッターで、この名が発表された。

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