福島・浜通りを照らす光がJ2に舞台を移す。首位いわきFCがホームで鹿児島ユナイテッドFCに3-0で快勝。2位藤枝、3位松本がともに敗れたため、2試合を残して「J3優勝&J2昇格」を果たした。16年の本格始動から6年の今季、J3に初参戦。90分間止まらず、倒れないサッカーで32試合を戦い、69得点21失点はともにリーグトップ。圧倒的な数字を残し、一気に駆け抜けた58番目のJリーグクラブは残り2試合もさらなる高みに向け、突き進む。

チケットは完売。声援が響くスタジアムの興奮は、冷めなかった。午後1時開始の一戦でFW有田稜(23)が前半、リーグトップの16ゴール目をマークして後半へ。前線からプレスを仕掛け、攻撃に転じれば前に向かう姿勢がさらに強くなった。MF山口大輝(25)が同17分にヘディングで2点目を奪うと、同22分はMF嵯峨理久(24)がダメ押しの3点目。イレブンは最後まで走り続けて寄せつけず、ホイッスルが鳴り響いた。同時刻開始の藤枝が敗れた時点でJ2昇格が決まり、同2時開始の松本も敗戦。J3優勝のシャーレが何度も掲げられた。

就任1年目の村主博正監督(46)は「90分通して選手たちが躍動したことに感謝」と、目には光るものがあった。アウェー鹿児島でのJ3開幕戦から着実に勝ち点を積み上げ、リーグ前半から上位をキープ。厳しい夏場の7~9月には10戦負けなしをマークした。「開幕戦はJリーグを経験した選手がいなくて緊張、不安、あと楽しみでスタートしたが、1試合1試合、選手が成長してくれた」とたたえた。

16年に福島県2部リーグに参入。福島浜通りを拠点に置くクラブは年を重ねるごとにステップアップ。ホームで使用する同スタジアムは福島第1原発事故収束の最前線だった。指揮官は「今日の試合も(事故直後の)映像を見せ、我々(のチーム)は何のためにできたのかをもう1回選手と共有し、その人たちのためにも90分間止まらず、倒れないことをあと270分やりきろうと選手を送り出した」。

10月には施設基準の例外適用申請により、J2クラブライセンスが交付される後押しもあった。「J2は42試合や天皇杯。連戦も入ってくるので、簡単に勝てるリーグではない。もう一回り体を大きく、トレーニングを積まないといけない」と気を引き締める。J2でも思いや期待を背負い、前へと進む。【相沢孔志】