J2町田ゼルビアに所属する元日本代表DF太田宏介(36)が3日、今季限りでの現役引退を発表した。都内で会見を行い、冒頭から「こういうの弱いんだよな」と瞳を潤ませた。涙もあれば、マネジメントを委託する吉本興業から芸人がサプライズ登場するなど、笑いもあり。今後はさまざまなプランを考えているが、現役時代と変わらず家族を第一に考え、活動していくという。
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太田が具体的に引退を決意したのは今シーズン前だった。代名詞の左足キックを武器に日本代表や海外クラブでも活躍。胸を張って「自分のキャリアに満足できた。これまで18年間悔いなく、本当にやりきったと思えたので今シーズンを最後の1年にしようと決めました」と明かした。
横浜FCに入団直後、「ボールをもらうのも怖かった」自分を起用してくれた高木琢也監督、「目の前に相手がいても上げられるクロス」をマンツーマンでたたき込んでくれた同じく横浜FCの都並敏史監督、東京でセットプレーのキッカーとしても才能を見いだしてくれたランコ・ポポビッチ監督らに感謝。そして町田をJ2優勝に導こうとしている黒田剛監督のマネジメント力を絶賛。「トップに立つ人がどれほど大事か改めて痛感しました。最後、監督を男にできたら最高ですね」と話した。
プロ人生18年で優勝はJ2横浜FC1年目の06年のみ。「最初と最後の年に優勝できたらハッピーエンドかな」と笑顔を見せた。今季はまだ1度も先発出場はないが、練習から手を抜くことなく、最後までチームを盛り上げる意気込みだ。
そんな太田のモチベーションの源は「母親に楽をさせてあげたい」。中学生の頃に両親が離婚し、苦しい生活も味わった。そんな中、父親代わりになってくれたのが兄だった。
「兄弟で力を合わせて、というのが僕にとっての最大のモチベーション。それをブレずに、忘れずに貫き通してきたことが、キャリアを伸ばせた一番の要因かなと思ってます」。兄の大哉さんは実業家として成功しており、太田は今後、兄とも連携しながらサッカー界へ恩返しできるような活動も考えているという。【千葉修宏】
◆太田宏介(おおた・こうすけ)1987年(昭62)7月23日、東京・町田市生まれ。麻布大渕野辺高(神奈川)では川崎F小林悠やお笑いコンビ「ぺこぱ」のシュウペイと同期。左足が武器のDF、MFとして2、3年時に全国選手権に出場した。06年にJ2横浜FCに入団。清水、東京、フィテッセ(オランダ)、名古屋、パース・グローリー(オーストラリア)を経て、少年時代に前身のFC町田に所属していた縁もあり、昨年7月にJ2町田に加入した。A代表では7試合に出場。179センチ、78キロ。家族は夫人と2男。