今、「オジバナダ」が熱い。今日9日に天皇杯決勝を迎える川崎フロンターレMF橘田健人主将(25)の叔父・龍馬さん(51)。自身のX(旧ツイッター)に健人のチャントを全力で歌って踊る動画を投稿すると、サポーターの間で話題に。ジワジワ認知度を上げると、FW小林悠(36)やMF脇坂泰斗(28)、DF車屋紳太郎(31)らが次々と反応し、クラブレベルでも知られる存在となった。

どちらかというとおとなしい健人とは正反対とも言える強烈なキャラクターがウケている。このほど、そんなオジバナダへの接触に成功。動画へのこだわりや、意外な過去が明らかになった。

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応援動画の中では、ややどんくさい中年男性を演じている龍馬さんだが、実は運動神経抜群だったという。「高校のスポーツテストで全国1位になりました。足はめちゃくちゃ速かったですよ」。

健人の祖父にあたる、龍馬さんの父親は社会人野球でプレーした野球選手だった。健人の父親は野球、龍馬さんはサッカーを選択した。「鹿児島工業というチームで県のベスト4か8で負けてしまいましたが、鹿児島県選抜に選ばれました」。中学まではFWだったが、高校でサイドバックにコンバート。激しい上下動と読みの鋭さが売りだった。「健人は完全に私の血を引いていますね。守備の読みの良さと運動量はおれにそっくり」と言って豪快に笑った。

自身も当然プロサッカー選手を夢見たが、鹿児島県選抜でチームメートだった1学年下の前園真聖(鹿児島実業)のプレーをみて諦めた。「一緒に練習してビックリしました。幼稚園児と高校生くらい違った。限界だなと」。大学から誘いもあったが、断って就職した。

龍馬さんは、若くして鹿児島を出て上京したため、健人と遊んだのは数えるほどだという。「小さい頃からサッカーをやっているのは知っていました。モノが違うなという感じでした。サッカーだけでなく、野球も才能がありましたね。すごく基本に忠実で確実なプレーをする子だなという印象です」。

とはいえ、自身はプロに入る選手のレベルを目の当たりにし、その厳しさも分かっているつもりだった。「健人がプロにいけるとは思わなかったですね。体も小さかったですし、好きなサッカーを大学までやれたらいいなと思って見ていました」。健人が名門・神村学園に進み、1年時からエース番号を与えられるも、“叔父心”からあまり期待はかけなかった。健人は高校3年間、全国大会に出場することができなかった。そんな姿を遠くからみて、要所要所で連絡をとった。「決勝までいけることもすごいことだぞ、この先に取っておくためかもしれないぞ」。

サッカー選手になる前から自慢の甥っ子だ。「サッカーでプロに行くか分からないけど、どっちにしろうまくいく。何でもまじめに取り組むから社会に出て、みんなに好かれるはず」。そして「健人以上にピュアで優しい子には会ったことがない」と言い切る。

健人は神奈川の強豪・桐蔭横浜大に進学したが、カメラマンという職業柄、土日に仕事が入ることが多く、大学時代の試合は一度も応援にいけなかった。「申し訳ないというか、悔しい。関東に出てきているのに会えなかった」。積年の思いを今、動画という形で爆発させている。

自分がなれなかったプロサッカー選手という夢を甥っ子がかなえた。しかし、手放しで喜んでいるわけではない。「就職先が見つかってよかったなという感じです。もちろんうれしいんですけど、あの身長(169センチ)で、特別スピードがずばぬけているわけでもなくて、どうやって試合出られるんだろうって。不動の位置を取れるとは思わなかった」。

自身も浮き沈みが激しいプロの世界に身を置く。業界こそ違えど、その厳しさは理解しているつもりだ。「私もケガしたらお金は一切入ってこなくなりますから。でも今、与えられたものを全力でやることをずっと意識しています。選手も同じで、プレーヤーとしてできなくなっても、チームが勝つように全力で動いたら誰も見放さないはず。健人は性格が良いからフロンターレに残れるのかなって思います」。

健人に授けた金言は「人生とは勢いと愛だ」。オジバナダが応援投稿を始めた10月3日から川崎Fは公式戦負けなしと勢いに乗る。天皇杯決勝当日は、仕事のため現地応援がかなわないという。「仕事で見られないのは宿命なので、その代わり動画で爆発させます」。大きな愛を持って遠くから応援している。【佐藤成】