モンテディオ山形の渡辺晋監督(50)が6日、天童市内にあるクラブハウスで会見を開き、今季の総括と監督就任までのいきさつを振り返った。

シーズン序盤の4月、ピーター・クラモフスキー前監督(45)が解任され、渡辺晋コーチ(50)が監督に就任。一時は8連敗で21位まで落ち込んだチームを見事プレーオフ進出に導いた。【取材・構成 木村有優】

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2月18日の開幕からわずか2週間で悲劇は始まった。山形は、3月4日ジュビロ磐田戦から4月2日水戸ホーリーホック戦まで5連敗。水戸戦終了後の午後11時ごろ、当時、コーチだった渡辺監督の携帯が鳴った。その電話が「監督就任要請」だということは、すぐにわかったという。しかし、渡辺監督は「(自分は)コーチとして山形に招かれたのだから監督になるべきではない。依頼は断ってくる」と妻に伝えた。だが、長年支え続けてきた妻は「あなた、男でしょ。ここで投げ出すの? 選手たちは困ってるんじゃないの?」。この言葉が渡辺監督の胸を突き刺した。同時に、自信を喪失した選手や、選手間で激しい口論を繰り広げていた姿がよみがえり、強固なはずの決意が少しずつ崩れていった。「ここで要請を断ったら苦しんでいる選手にどういう顔をして会えばいいんだろう。『要請を断った渡辺晋』より『要請を受けた渡辺晋』でありたい」と一晩をかけようやく受諾の意向が固まったという。

監督就任時、18位の状態では「J2優勝」は難しいと判断。就任後のミーティングでは「ここからの戦いで優勝する資格があったことを見せようよ」とチームを鼓舞。「残りの試合×勝ち点2」を1つの目標に「残り35試合で勝ち点70」を掲げた。ようやく4月22日東京ヴェルディ戦で勝利を挙げたが、連敗はチームワーストの「8」を記録。順位はJ3自動降格圏の21位まで落ち込んでいた。最終的には勝ち点70には届かなかったが、残り6試合で「ここから6連勝しよう」と目標を立てた。だがその矢先、徳島ヴォルティスに0ー1であっけなく敗戦。「お前たちにもプライドがあるだろ。意地を見せろ!」と一喝し、そこからチームは5連勝。2年連続のプレーオフ進出をつかみ取った。

勝たなくてはいけない理由がもう1つあった。サポーターの存在だ。「(他チーム在籍時)山形と対戦する時は特にアウェー感を感じ、非常に戦いづらかった。でも、味方になるとこんなに心強いんだと思いました」と感謝。さらに「『敗戦の原因は自分の責任。(厳しい言葉は)選手ではなく全て自分に言ってくれ』とサポーターに呼びかけた際に、『監督だけじゃなくて俺ら(サポーター)にも責任がある』と言ってくれた。こんなサポーターはいませんよ。だから、彼らのためにも戦いたい」と力をこめた。「就任要請を受けて良かったかどうかはまだわからない。むしろ自ら成功に持っていき、10年後くらいに、あの時要請を引き受けて良かったと思うようにしなくてはいけない」と語った。

「来季もまたJ2優勝を目指すが、本気度が問われると思う。敗戦から多くを学び、ここまではい上がってきた選手らを誇りに思いますが、ここで満足したら先がない。今年をベースに、失点の多さを改善するために守備の再構築をしていきたい」と気を引き締めた。今月中旬、プレミアリーグに所属するチームの試合やトレーニングを視察するため、イングランドへ渡り「J2優勝」に向けて早くも始動する。山形が、来季こそ最高のエンディングを迎えるため、最善の準備を重ねていく。