青森山田が2大会ぶり4度目の頂点に立った。決勝で近江(滋賀)の挑戦を振り切った。昨秋から率いる正木昌宣監督(42)が、黒田剛前監督(53=現J1町田ゼルビア監督)から引き継いで実質1年目に、チームを再び日本一へ返り咲かせた。

磨き上げたサイド攻撃から、初決勝で勢いに乗る近江の守備を切り崩した。前半33分、MF芝田玲(3年)から一度、右サイドのMF杉本英誉(3年)へ。杉本ペナルティーエリア内の様子をうかがい、クロスを供給。ペナルティーエリア中央のMF福島健太(3年)が胸トラップで足元に落として、右足一閃(いっせん)。ゴール左上に突き刺した。

後半は開始2分に追いつかれ、迎えた16分に突き放す。エースFW米谷壮史(3年)のゴールで勝ち越した。中盤の空中戦で競り勝つと、こぼれ球を拾うと縦に速い攻撃を繰り出した。縦パスに抜けだした米谷が相手GKと1対1になり、最後はかわしてネットを揺らした。米谷はこれで今大会5点目。市船橋FW郡司璃来(3年)と並び、得点ランク1位に躍り出た。さらには25分にはカウンターからオウンゴールを誘って3点目を奪い、リードを広げた。

新体制で初の頂点に立つと、正木監督は「すごいとしか言えない選手たちに囲まれて感謝しかない」と涙を流しながら感無量の表情を浮かべた。

表彰式を終えた後も「最高です。その一言です。いろんな人たちにお世話になってゲームができましたので、全ての人たちに感謝したい。築き上げてくれた黒田監督にも感謝していますし、学校関係者にも感謝したいと思います」と語った。

昨年10月、正木監督は黒田前監督からチームの指揮を託された。黒田氏が総監督としていたものの、実質的な指揮を執った昨年の選手権は8強に終わる。21年度以来の3冠を狙った今季の新チームも、昨夏インターハイで3回戦敗退。3冠の夢はついえたが、チームは2冠を目指し、再度立ち上がった。

「プレミアリーグだとやっぱり守ってるだけでは勝てないので。守りから今度攻撃にっていうところっていうのはかなりやってかないとと感じてました。今年はサイドに良さを出せる選手がそろった」

正木監督はサイド攻撃からのバリエーションを増やし、プレミアEASTは16勝3分3敗。連敗や連続での引き分けはなく、持ち味の守備力を維持しながら、攻撃をアップデートし続けた。サンフレッチェ広島ユースとのプレミアファイナルでは、0-1で迎えた後半45分から、わずか4分で逆転。4年ぶり3度目となる高校年代の“真の日本一”に輝いた。

夏の悔しさから強さを取り戻した青森山田は、プレミア勢5校が集う死の組Bゾーンをわずか2失点で勝ち上がり、黒田前監督でも6回挑んで半数の3回落とした決勝へ2大会ぶりに挑み、勝ち切った。

スタンドでは黒田氏も涙を見せた。約1年3カ月の正木体制は決して平らな道ではなかったが、初挑戦で全国3842校の頂に立った。【濱本神威】

◆正木昌宣(まさき・まさのり)1981年(昭)5月22日、札幌市生まれ。中学時代に約2年間、ブラジルへサッカー留学。高校は青森山田に進学し、インターハイ、全国選手権合わせて5度全国出場。仙台大に進学し、卒業後青森山田でコーチに就任。昨年10月に黒田剛前監督の町田監督就任に伴い、青森山田の監督を引き継いだ。

★今大会の勝ち上がり

2回戦 1(5PK3)1 飯塚(福岡)

3回戦 7-0 広島国際学院

準々決勝 4-0 昌平(埼玉)

準決勝 1(4PK2)1 市船橋(千葉)

決勝 3-1 近江(滋賀)

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