「J2の番人」こと水戸が、クラブ悲願となるJ1初昇格とJ2優勝を成し遂げた。

2-0で大分に勝利し、2位から逆転優勝。後半1分に茨城出身のFW多田圭佑(23)のヘディングシュートで先制すると、同30分にはMF山本隼大(22)の2試合連続ゴールで試合を決定づけた。94年に地域クラブとして誕生。00年のJ2参入から26季目にしてようやくの「J2卒業」を力強く宣言した。

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青く澄んだ水戸の空の下で2度の歓喜が湧いた。3試合ぶりの勝利でJ1自動昇格権を決めると、数分後にはJ2初優勝の吉報も届いた。四半世紀の苦節がついに二重になって報われた。

ホーム戦最多入場者数を更新した1万743人の大観衆に見守られながら、選手たちの手でクラブOBの森監督は3度、宙を舞った。「(クラブ創設から)31年間の歴史が脳裏にもあって、自分たちが目指してきたものを取れたことにまだ現実と信じられなかった」。安堵(あんど)の表情を浮かべた。

JFL時代は土のグラウンド。ゴール前は野球のマウンドで緩やかな山となって盛り上がっていた。そんな環境下で99年にJ2昇格を決めた。ステップアップも実は消滅と背中合わせだった。当時GKで在籍した本間氏は「後々、社長に聞いたら『今年上がれなかったら、畳もうと思っていた』と言うんです。本当に奇跡だった」と細い綱を渡った。

J2でも過去最高順位は03、19年の7位。これまで昇格プレーオフに進んだこともなく、「J2の番人」ともやゆされた。それでも、「J1へ」-。自信をつけたチームは夏ごろからトップカテゴリーの世界を口にするようになった。

育成重視のクラブカルチャーも実を結んだ。選手にはピッチ内だけではなく、座学や1対1の対話の場を通して睡眠や栄養学、メンタルトレーニングの時間をセッティング。さらには伝統だった選手への「黒髪縛り」も指揮官が改革に乗り出し、「金髪もOK」にした。若手がのびのびと力を伸ばしていける環境づくりに努めてきた。

今季8得点と活躍した高卒2年目のFW斎藤も「若手がやりやすい環境で普段から全員プレーができている。サッカーだけではなく人間力を含めて育っている」と実感を込める。

来季からは茨城県内に2つのクラブがぶつかる。J1で優勝目前に迫る鹿島が強敵なのは分かっている。だが、茨城出身の多田は「J1で結果を残すことが本当にサッカーを根付かせると思っている」。

「これから水戸ホーリーホックは『J2の番人』を卒業します」と主将のGK松原。つかみ取ったJ1切符を片道に変えるための挑戦へと走り出す。【泉光太郎】

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