神村学園3年のFW日高元(はじめ)が、得点ランキング単独トップに立つ決勝点を挙げて夏冬2冠に導いた。前半19分に左足を振り、貴重な先制点。無得点だった準々決勝の後に得点王への欲を消し、チームのために走る覚悟を決めた男が準決勝に続く2戦連発で主役となった。大けがを乗り越え、大舞台で人生最高の得点を奪い、歓喜に酔いしれた。Jリーガーの夢へ最後の冬にアピールした。
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ボルトが入った左足で6万人超を沸かせた。前半19分、神村学園は背後への飛び出しから好機をつくり、日高の前にボールがこぼれる。ペナルティーエリア外から丁寧に、左足でゴール左隅に蹴り込んだ。「GKが(飛び出して)いない状況の中(利き足ではない)左足だったけど、うまく流せて良かった。人生で一番最高なゴール」と喜んだ。
高校2年の全国高校総体で左膝を負傷。リハビリ後の復帰戦で左足第五中足骨を骨折する不運に見舞われた。手術を受け、翌年4月まで離脱。今も完治せぬまま走ってきた。「まだボルトが1本。それが役に立った」と笑うが、その左足でチームを日本一に導いた。
精神的成長を示すゴールでもあった。チームメートで宿舎が同部屋のFW倉中と、得点数を競うように勝ち上がった。初戦の2回戦で日高がハットトリックを決めて3回戦でも2得点。しかし、無得点に終わった準々決勝で4得点を奪った倉中が通算6得点とし、一気に抜かれた。試合後の日高は1人、ロッカールームで涙を流していた。竹元真樹総監督から「自分のことしか考えていない」と一喝され、目が覚めた。「チームの勝利こそが一番だと気づけた。メンタル面で強くなれた」と転機になった。
改心した後、聖地国立での準決勝から2試合連続ゴール。計7発で単独得点王の称号が、無心の男に舞い込んだ。「得点王はもういいかなと思っていたけど、準決勝も決勝もワンチャンスを決め切れた。勝負強さが出た」。倉中からは「おめでとう」と祝福され、固く抱擁を交わしたという。
負傷で落ち込み、一時はサッカーをやめることすら考えた。それでも両親と約束した「プロになる」夢を救いに諦めなかった。進路未定で大会を迎えたが、実際にJクラブからオファーが届き、さらに増える可能性も十分ある。「進路で困っていたので安心した(笑い)。まだ秘密。焦らず決めたい」も実現は目前だ。
両親から授かった「ハジメ」の名には「何でも一番に」という意味が込められている。ゴール数もチームも、その通りの活躍。日は高く昇り、同校初の日本一に上り詰めた。【佐藤成】
○…選手権得点王に輝いた神村学園FW日高に、J2大宮から獲得オファーが届いていることが分かった。世界的飲料メーカーのレッドブルが株式の100%を取得して強化を図り、今季6位でJ1昇格プレーオフにも進出した上位クラブ。昨年4月まで長期離脱して“就職活動”に出遅れた日高だが、最終学年の大舞台で7得点のアピールが実った。評価は高まる一方で争奪戦になる可能性もある。
◆日高元(ひだか・はじめ)2007年(平19)11月13日生まれ。宮崎市(旧佐土原町)出身。幼稚園の年少でサッカーを始め、小学校時代はINSEBLU FCに所属。神村学園中等部に進み、高等部に上がった。目標の選手は日本代表FW前田大然。武器はスピード。165センチ。63キロ。
○…文武両道を地で行くMF堀ノ口が前半39分、鮮やかなミドル弾で貴重な2点目を決めた。中盤の底のアンカーで頭脳的なプレーを持ち味とする男は学業も優秀。卒業後はサッカー部から初めて慶大へ進学する。難関大学を目指す同校の文理科に、部としても初めて在籍。授業があるため練習は1時間遅れの参加だったが「先生の理解があってやってくれたと思います。サッカーでも1年間考えてやってきたから、その成長が大きかった」と納得した。



