17日のオランダ1部NEC-フィテッセ戦で恐ろしい出来事が起きた。この試合は同じ州を本拠地とする「ヘルダーラント・ダービー」と呼ばれ、オランダでも有数の熱狂的な対戦として知られている。

1-0で勝利したフィテッセのサポーターたちが試合後、歓喜のチャントを大合唱しながら敵地ゴファート・スタジアムのスタンドでピョンピョンとジャンプ。するとピッチレベルから数メートル浮いた状態で作られていた1階席の前列部分が崩落したのだ。

文字どおりスタンドがV字にポキンと折れ、そのあたりに立っていたサポーターたちは座席とともにドスンと数メートル(見た感じでは1・5~2メートル程度)落下した形となった。だが地元メディアの報道によると、奇跡的にケガ人はゼロだったという。

面白い(と言ったら不謹慎だが)のは、崩落したスタンドからすぐに避難しようとしたサポーターはそれほど多くなく、その後も崩れたスタンドの上でこぶしを振り上げて選手たちをたたえていたファンが多かったこと。スタンドが壊れようとも、ダービー戦での勝利の方がファンにとっては重要だったようだ。

先日、ESPN電子版が「バルセロナの本拠地カンプノウの衛生面での劣化と老朽化が激しく、19、20年にはスタジアムの一部が落下する危険がありながら、ホームゲーム21試合を開催した」というような内容の記事を掲載した。1957年にオープンし、何度も改修を行ってきたカンプノウですらそういう状態だ。1939年開場と歴史のあるゴファート・スタジアムが観客のジャンプに耐えられなくなっていたとしても不思議ではない。

日本で取材をしていても、ファンのジャンプによって起こる揺れが記者席まで伝わってきて、少々怖い思いをすることがある。コロナ禍ではあまりなかったが、Jリーグの試合でもサポーターたちが勝利を祝ってチャントを歌いながらジャンプを繰り返すシーンはこれまでも見られたし、プロ野球では「稲葉ジャンプ(日本ハム)」「ヤスアキジャンプ(DeNA)」なんていうものもあった。

これからコロナの終息とともにスタジアムにもさらに活気が戻ってくるだろう。スタンドでたまっていたストレスを発散しようと思うファンもいるかもしれない。サッカー観戦を安全に、楽しいものにするためにも、海外ではスタンド崩落という事例も起きたということを頭に入れておいた方がいいかもしれない。【千葉修宏】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「海外サッカーよもやま話」)