レアル・マドリードが30日、エスパニョールに勝利し、2季ぶり最多35回目のリーグ制覇を決めた。

アンチェロッティ監督がエスパニョール戦前に「私にとっては非常に楽なシーズンだった」と語った通り、今季のリーグ戦を振り返ってみると苦労した様子はほとんどなかった。

トロフィーを持って喜ぶレアルマドリードの選手たち(AP)
トロフィーを持って喜ぶレアルマドリードの選手たち(AP)
優勝を喜ぶアンチェロッティ監督(ロイター)
優勝を喜ぶアンチェロッティ監督(ロイター)

Rマドリードは今季、欧州チャンピオンズリーグ(CL)3連覇の輝かしい結果を残したジダンに代わって、2013-14シーズンに念願の“デシマ(10回目の欧州CL制覇)”を成し遂げたアンチェロッティを6年ぶりに招聘(しょうへい)し、再起を図った。

しかし昨夏、守備の要のセルヒオラモスとバランが退団し、さらに欧州選手権、南米選手権、東京五輪とメジャー大会が続き、選手の3分の2が各国代表に招集されたため、まともにシーズン前の準備ができなかった。

さらにパリ・サンジェルマンのフランス代表FWエムバペ獲得に失敗し、補強は移籍金ゼロのDFアラバと10代のMFカマビンガのみ。攻撃陣でメンバーに加わったのは期限付き移籍から戻ってきたベールとヨビッチだけだった。

この状況下、アンチェロッティ監督はかつて大成功を収めたBBC(ベール、ベンゼマ、クリスティアーノ・ロナウドの3トップ)の再現を目指し、ベール、ベンゼマ、アザールを前線に配置した4-3-3で新シーズンをスタートする。しかしベールが早々に長期離脱を余儀なくされ、アザールも一向に調子が上がらず、頼れるのはベンゼマのみとなり、イタリア人指揮官のプランは早々に崩れ去った。

いきなり困難に直面した監督を救ったのは、覚醒したビニシウスだ。Cロナウド退団以降、チームは3季にわたり決定力不足に苦しんでいたが、このブラジル代表FWがシーズン開幕からの公式戦6試合で5得点と大爆発。アシスト能力も向上させ、これまでと見違えるパフォーマンスを発揮したことで、チームはベンゼマ依存症から抜け出す新たな武器を手に入れた。

Rマドリード・FWビニシウス(2019年7月23日)
Rマドリード・FWビニシウス(2019年7月23日)

今季、チーム危機が囁(ささや)かれた時期が大きく2回あった。それは昨年9月から10月にかけて格下と思われた欧州CL初出場のシェリフ(モルドバ)、今季1部に復帰したばかりのエスパニョールに連敗した時、そして今年に入り、国王杯準々決勝でビルバオに敗れタイトルをひとつ落とし、その悪い流れの中、欧州CL決勝トーナメント1回戦第1戦の終了間際にエムバペにゴールを許し、パリ・サンジェルマンに痛恨の敗北を喫した時である。

一方、3月にホーム開催のクラシコに0-4で敗れた後、アンチェロッティ監督の手腕に疑問がもたれたが、チームは崩れることなく持ちこたえた。

このように危ない時期はあったものの、リーグ戦に限って言えば大きな問題を抱えることはほとんどなかった。ライバルたちが次々とつまずいていった中、Rマドリードはビニシウスをベストパートナーにベンゼマがゴールを量産。ここまで30試合26ゴールでリーグ得点王の座を確固たるものにしており、クルトワが度々スーパーセーブを披露して1試合平均0・85失点(34試合29失点)と堅固な守備を発揮し、順調に勝ち点を積み重ねていった。

第14節で首位に立った後、一度もその座を譲ることなく勝ち点差を広げていき、34試合25勝6分け3敗の勝ち点81という好成績で、リーグ終了まで4節を残して早々にリーグ優勝を決めたのである。

残り4節での優勝は21世紀のスペインリーグ最速であり、クラブ史上、85-86、87-88、89-90の3シーズンに並び4番目に速い記録である。

レアルマドリードのカリム・ベンゼマ(AP)
レアルマドリードのカリム・ベンゼマ(AP)

一方、クラブおよびスペインリーグ史上の最速優勝は残り5節。Rマドリードが60-61、62-63、74-75の3シーズン、バルセロナが73-74シーズンに達成している。

今回の優勝によって、契約が今年6月30日で満了するため今季終了後に退団濃厚のマルセロが、今は亡きRマドリードの元名誉会長ヘントを上回り、クラブ史上最多となる24タイトル目を獲得した。優勝パレードではキャプテンとして、シベレスの女神像に旗とマフラーを飾り、祝福のキスを贈る大役を初めて務めた。

さらにアンチェロッティが、監督として史上初の欧州5大リーグ(スペイン、イングランド、フランス、ドイツ、イタリア)制覇を達成。Rマドリード以前はミラン、チェルシー、パリ・サンジェルマン、バイエルン・ミュンヘンに優勝をもたらしている。

また、今季の優勝はサポーターにとって特別のものとなっている。なぜならRマドリードがホームスタジアムのサンティアゴ・ベルナベウでリーグタイトルを手にするのは06-07シーズン以来、実に15年ぶりのことだからである。

2季前のリーグ制覇もホームで決定したが、この時は新型コロナウイルスの感染拡大による無観客開催を受け、クラブがサンティアゴ・ベルナベウの改修工事を継続したため、代わりに練習場併設のBチームのスタジアムを使用していた中での優勝となった。これにより選手たちはサポーター不在の中、身内だけで3季ぶりの優勝を祝い、サポーターは自宅でひっそりと選手たちの頑張りをたたえていた。

Rマドリードは今季ここまでスペイン・スーパーカップと合わせ2冠達成。次のターゲットは史上最多14回目の優勝を目指す欧州CLだ。そのためにはまず、5月4日にホームで行われる準決勝第2戦マンチェスター・シティー戦で、アウェーでの3-4の敗北を逆転し、4季ぶりの決勝進出を決める必要がある。

【高橋智行通信員】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」)

優勝トロフィーを掲げるレアル・マドリードイレブン(ロイター)
優勝トロフィーを掲げるレアル・マドリードイレブン(ロイター)