バイエルン・ミュンヘンは12月21日、ホッフェンハイムに所属するドイツ代表FWサンドロ・ワーグナーの獲得を発表した。これにより2008-09シーズンに始まった同選手の放浪記はついに終わりを迎え、約10年ぶりにかつてのホームへ帰還することが決まった。

 2007年、ワーグナーは名将オットマール・ヒッツフェルト氏の下、19歳でプロデビューを果たし、ブンデスリーガ4試合、そしてUEFAカップ(欧州リーグ)1試合に出場。しかしその頃のバイエルン・ミュンヘンには、イタリア代表ルカ・トーニをはじめ、ドイツ代表ミロスラフ・クローゼ、同代表ルーカス・ポドルスキら看板選手が前線に揃い、またヤン・シュラウドラフもいたため、ワーグナーの立ち位置はFWの5番手以下に過ぎなかった。

 出場機会を求めるワーグナーは2008年6月にバイエルン・ミュンヘンとの契約を満了し、フリーでデュイスブルクへ移籍すると、その後もブレーメン、カイザースラウテルン、ヘルタ・ベルリン、ダルムシュタット、ホッフェンハイムなど、2部も含めドイツ国内を転々とした。そしてようやくシーズン二ケタ得点を記録したのは、ダルムシュタット所属時の2015-16シーズン。バイエルン・ミュンヘンを離れてから約8年が経過していた。

 かつての愛弟子のカムバック劇について、ヒッツフェルト氏は大衆紙「ビルト」にこう話している。

 「この10年間に多くのクラブを渡り歩き、ドイツ代表選手にもなってバイエルン・ミュンヘンに戻ってきた。まるで小さなおとぎ話のようだね。彼はすでにバイエルン・ミュンヘンというクラブをよく知っているし、チームにすぐ馴染むだろう。そしてこれまで彼は回り道をして、挫折を味わいながらも、目標を決して見失うことはなかったし、絶対に諦めなかった」

 「私がバイエルン・ミュンヘンを率いていた当時、まだ体の強さやスピードが欠けていて、すべての面を鍛える必要があった。あの頃のサンドロは『とんでもない才能の持ち主』と呼べるレベルでは到底なかった。だからこの10年間の彼の成長は、本当に際立っている」

 バイエルン・ミュンヘンでレギュラーを勝ち取るには、目下エースの座を守るポーランド代表ロベルト・レバンドフスキと争わなければならない。ヒッツフェルト氏も「きっと一定の出場時間はもらえるだろう。しかし過度の期待は禁物だし、レバンドフスキと比較するべきではない。なぜならレバンドフスキは、世界でもベストなFWの1人だからだ」と話しているが、しかし同氏も先に語ったように、ワーグナーは10年という時間をかけて着実に階段を上り、ドイツ最大のクラブに舞い戻って来た稀有な存在。恩師の予想を覆し、レバンドフスキとスタメンを争う立場となる可能性も、決して低くはないだろう。