12月7日の対ハノーファー戦を最後に勝利から見放され8連敗中だったシュツットガルトは、最下位のブラウンシュバイクとも引き分けに終わったことで、ついにトーマス・シュナイダー前監督のクビを切った。そしてその2日後、同クラブ指揮官に就任した人物は、それからさかのぼること1週間前にギリシャはPAOKを解任されたばかりのフーブ・ステフェンス。2011年9月~2012年12月にシャルケを率いていたオランダ人監督で、その名前を覚えている方も多いのではないだろうか。

 彼は最初のトレーニングでチームに変化を与えた。

 シュナイダー前監督が、練習時における靴下の自由を認めていた(※大半の選手は、主にテニス選手が履くような短いソックスを着用)のに対し、ステフェンス監督は通常のサッカーソックス、そしてスネ当ての着用も義務化した。

 同監督はこの措置についてこう説明する。

 「これは私からの明確な指示だ。試合中、選手達はサッカーソックスを履いて、スネ当てを身に付けなければならない。それが試合の規則であり、その状況下で日々のトレーニングをするだけ。単純な話だよ」

 加えて、既に降格争いに巻き込まれている同クラブの選手達を戦う集団に変えなければならない、練習中から激しくプレーさせなければならない、しかしそれでけがをしてしまっては元も子もない-スネ当て着用義務化には、ステフェンス監督のそんな意図も含まれているようだ。

 また同監督は練習中の新たなルールを別に設けている。それは『手でボールを扱ってはいけない』ということだ。

 『サッカーでハンドは反則。当たり前でしょ』とお思いだろうが、このルール、何もプレーに限った話ではない。練習開始から終了まで、とにかく『終始』手でボール触ってはいけないという。そして、もし、この規則を破ったらチーム全員がスクワットや腕立てなどの罰を課せられてしまうということだ。

 早速、誰かがルール違反を犯したのだろう。ステフェンス就任から数日後の大衆紙『ビルト』には、選手らが腕立て伏せをやっている写真が掲載されていた。

 ケルンが1部から2部へ降格したと同時に指揮官へ就任した04-05年シーズン当時、格下のSVバッカーに2-4で敗れた第2節の翌日、練習開始を1時間早め朝9時とし、またプロとしては異例となる土のグラウンドでのトレーニングを選手に命じたステフェンス。「こんなものが罰練習と言われるのならば、私の練習は全て罰練習だね」と話す指揮官は、そのようにチームを引き締め、見事ケルンを1年で1部に昇格させている。

 降格危機にあえぐシュツットガルトは今、全員が自信なさそうにプレーをしている。そんな状況にある同クラブにとって、実はステフェンスほどうってつけの監督は他にいないのかもしれない。(鈴木智貴通信員)