欧州代表のバルセロナ(スペイン)のFWルイス・スアレス(28)が、アジア代表の広州恒大(中国)戦で大会史上初のハットトリックを達成した。FWメッシが腎臓結石による痛みのため欠場し、左足付け根負傷のFWネイマールは出場機会なし。強力3トップでただ1人ピッチに立った背番号9が2人の穴を埋めた。4年ぶり3度目の優勝を狙うバルセロナは、20日の決勝で南米代表のリバープレート(アルゼンチン)と対戦する。

 キッカーは誰にも譲らなかった。バルセロナ2点リードの後半22分。FWムニルが倒されてPKを得ると、スアレスは真っ先にボールを拾い上げた。オレが蹴って当然とばかりにペナルティースポットにボールを置き、こん身のシュートをゴール左に突き刺した。

 大会史上初のハットトリックで歴史に名を刻み、勝利を引き寄せると、おなじみ「スアレスポーズ」。ソフィア夫人、長女デルフィナちゃん、長男ベンハミンくんを意味する右手親指、人さし指、中指にキスをして感謝の気持ちを表した。

 試合前、チームに不穏な空気が流れた。前夜に腎臓結石の痛みを訴えたメッシの欠場が決定。ネイマールもベンチ入りはしたが、左足付け根の筋挫傷でプレーは難しかった。バルサ自慢の「MSN」のうち2人を欠くピンチに、残るスアレスが「チームにとって大きな2人が欠場した。勝利を逃さないため、しっかり集中しないといけなかった」と奮起した。

 前所属先のリバプールでは「戦術スアレス」と表現できるほどボールが集まり、点を取りまくった。バルサではゴールを決めながらも、よりメッシ、ネイマールを生かすスタイル。それでもFWとしてのすごみが失われたわけじゃない。前半39分の1点目はミドルシュートのこぼれ球を狙い、後半5分の2点目は背後からのロングパスを胸トラップして右足シュート。どんな形でもゴールできる持ち味を存分に発揮した。

 ルイスエンリケ監督はスアレスについて「難しい状況でも対処法を知っている選手。チームにとって必要不可欠」とたたえた。4年ぶりの優勝へ向け、決勝はリバープレートが相手。スアレスは「(母国)ウルグアイとアルゼンチンには大きなライバル意識がある。リーベルとの決勝はそういうもの。バルセロナに優勝カップを持ち帰りたい」と意気込んだ。【千葉修宏】

 ◆ルイス・スアレス 1987年1月24日、ウルグアイ・サルト生まれ。ナシオナル(ウルグアイ)、フローニンゲン、アヤックス(ともにオランダ)を経て11年1月にリバプールに移籍。12-13年シーズンはチェルシー戦で相手にかみつき、10試合の出場停止処分。13-14年シーズンは33試合31得点で得点王。ウルグアイ代表として出場した14年ブラジルW杯でかみつき行為で出場停止処分を受けた。14-15シーズンにバルセロナに移籍し、今季はリーグ戦14試合13得点。代表通算82試合43得点。182センチ、85キロ。

 ◆クラブW杯記録メモ スアレスがクラブW杯史上初となる1試合3得点のハットトリックを初出場で達成。クラブW杯の1大会の最多得点は、09年大会で浦項(韓国)のブラジル人FWデニウソンがマークした4点。この記録にあと1点と迫った。また、モンテレイ(メキシコ)のアルゼンチン代表FWデルガドが12年(3点)と13年(2点)で達成した大会通算最多5点にもあと2点とした。なお、バルセロナの同僚、FWメッシは09、11年の2大会で通算4得点。