企業スポーツの休廃部が相次ぐ中、ベルリンで開催されている陸上の世界選手権に女子マラソンの加納由理を送り込むセカンドウィンドACは実業団主流の日本陸上界で「脱企業」を打ち出す異色のクラブチームだ。

 2007年の設立から3年目。川越学監督は「市民ランナーと一緒に走るプロランナー加納の頑張りでクラブが活性化する」と期待する。近年のランニングブームも追い風になり、市民ランナーからジュニアまで幅広い層に門戸を開くクラブの会員は現在約700人。川越監督は「クラブ運営はまだ発展途上」と話すが、今回の加納のために公式サイトで1口5000円のカンパを募ると約200万円集まったという。

 前回世界選手権で6位の嶋原清子や北京五輪6位のマーラ・ヤマウチ(英国)らトップ選手の活動資金は、主にクラブ会員の会費や協賛金で賄う。トップ選手が引退後に希望すれば会員の指導ができるセカンドキャリアも支援。サッカーを軸にしたスペインの総合型クラブ、バルセロナの運営を理想とし、不況や成績に左右されない一貫指導の確立を目指す。

 セカンドウィンドとは「壁を越えた瞬間、呼吸が回復して感じる新しい世界」。資生堂を退社し、夢だったクラブを発足させた川越監督もベルリンで壁を越える瞬間を心待ちにしている。(共同)