駒大の年度3冠を阻止するのはどこか-。90回の記念大会となる東京箱根間往復大学駅伝は、明日2日午前8時に、東京・大手町で往路の号砲が鳴る。昨年10月の出雲、11月の全日本を制した駒大は、名将・大八木弘明監督(55)の手綱さばきのもと、6年ぶり7度目の箱根路制覇をもくろむ。選手層の厚さでは屈指を誇る東洋大に、前回メンバーが残り連覇を目指す日体大を含めた3強に、伝統校も下克上を狙う。3日に大手町でゴールテープを切るのは、果たしてどこか。

 過去の年度3冠は、90年度の大東大、00年度の順大と10年度の早大。この10年周期を駒大が打ち破ろうとしている。今季2レースの計14区間で、区間賞8を含め同3位以内が何と13回。圧倒的な強さの原動力は、大八木監督が「4本柱」と呼ぶエースたち。特に中村と村山の3年生コンビの走りは圧倒的だ。

 中村は2レースで1区を担当。他校のエース級をぶっちぎる、連続区間賞で主導権を握った。そして中盤に勝負を決めたのが村山。こちらは連続区間賞を区間新記録で樹立。「同じ区間賞でも村山は新記録。彼に勝たないと意味ない」(中村)「前年は中村が窪田さんとともにダブルエースといわれた。あれは悔しかった」(村山)と、ハイレベルのライバル意識がチームの士気も高めた。

 「下級生に負担をかけまい」と、窪田と全日本4年連続区間賞の油布の4年生コンビも発奮。区間エントリーされた1年生コンビに馬場、黒川ら充実の布陣を誇る。過度な重圧をかけまいと指揮官も「前回は勝つ予定だったけど今季は育成の年。たまたま2冠を取っただけで、箱根も勝てればいい、ぐらいの気持ちで私も選手もいますよ」と平静を通す。それでも、昨年のような直前で体調不良などのアクシデントさえなければ、下馬評では圧倒的なV候補だ。

 新山の神・柏原竜二(現富士通)が抜けた昨季からの学生3大駅伝で、5大会連続2位の東洋大は「その1秒を削り出せ」をスローガンに、決死の覚悟で箱根路に臨む。今季2レースでは双子の兄弟で主将と副主将を務める設楽啓、悠のダブルエースが消化不良の走り。合格点は服部勇ぐらいだろう。それでも1万メートル上位10人の平均タイム28分35秒5は、駒大を約7秒離し出場校最速。経験豊富な田口が1区で本来の走りで滑り出し、補欠から往路に投入される設楽悠らでタイムを稼ぎ「(日体大)服部君の前で5区を走りだし、彼を慌てさせるような走り」(酒井監督)に持ち込むのが理想の展開。5区に設楽啓を投入すれば、復路も充実した布陣を誇るだけに、2年ぶりのV奪回へ視界は開けるはずだ。

 昨年Vメンバー7人が残る日体大は、その原動力となった5区服部主将、6区鈴木の「箱根の山経験者」が今年も同じ区間を走る。各校とも山のスペシャリスト養成に苦心するだけに、このアドバンテージは大きい。さらに服部を含めた本田、矢野、山中の1万メートル28分台カルテットは、駒大の4本柱と比べても見劣りしない。全日本8位惨敗から「攻める駅伝」に転じた前回王者の下馬評は、ここにきて急上昇している。

 学生最速の大エース大迫を1区に立てた早大は、大逃げしたいところ。全日本3位の明大は、5000メートルのスピードでは出場校随一だ。一昨年の出雲を制した青学大は神野、一色の2枚エースで一波乱もくろむ。選手層の厚さを自負する帝京大、付属高が都大路を制しオムワンバ、井上の2枚エースで臨む山梨学院大などの伝統校も、シード権争いから1歩前に出れば不気味な存在になりそうだ。