家族への恩返しを胸に走る。山梨学院大が14日、甲府市内で、箱根駅伝(来年1月2、3日)に向けた練習を公開し、主将の上村純也(4年)が22年ぶりの優勝を誓った。母子家庭に育ち、高校卒業後は陸上競技をやめる予定だったが、母やきょうだいに支えられて続けてきた。2位の出雲、3位の全日本は、けがで出場できなかった分、大学最後の箱根で全てをぶつける。

 打倒青学大候補の山梨学院大に頼もしい主将が帰ってきた。上村は9月下旬に左膝の靱帯(じんたい)を痛めていたが、箱根には万全の状態で臨める見込みで「今年は(チームは)例年以上の結果を残していますが、『3大駅伝優勝』の目標にはまだ手が届いていない。全員で箱根駅伝優勝を取りにいきます」と力強く宣言した。

 家族への感謝を胸に走る。小1の時に両親が離婚。それからは母まゆみさんが、昼も夜も働き、女手一つできょうだい4人を育ててくれた。4歳上の姉茉莉さん、2歳上の兄啓太さんも高校卒業後、働いていた。家計を少しでも楽にするため、自分もそうするつもりだった。ただ、そんな高校2年の冬、「ずっと出たかった」箱根駅伝の常連・山梨学院大から声がかかった。夢を取るべきか、家族を支えるべきか、悩んだ。

 2月。家族に相談した。茉莉さんから言われた。「あなたのやりたいことをやっていいから」。大学進学を後押ししてくれた。貯金を使い、進学の準備も手伝ってくれた。茉莉さんは今も遠征費やサプリメント代などを補助してくれる。主将として悩んだ時、啓太さんは話を聞いてくれる。「本当に感謝してます。家族には本当に助けられた」。

 チームは出雲2位、全日本3位。ただ、自分は走る姿を見せられなかった。卒業後はSUBARUで競技を続けるが、大学駅伝はこれが最後。本番は家族も応援に来る。【上田悠太】

 ◆上村純也(うえむら・じゅんや)1994年(平6)5月16日、栃木・足利市生まれ。足利西中から白鴎大足利高を経て、山梨学院大に入学。箱根駅伝は1年時から順に4区19位、4区12位、10区5位。5000メートルの自己記録は13分58秒74。好きな芸能人は新川優愛。176センチ、60キロ。血液型はA。