16種目のダイヤモンドリーグ最終戦が行われ(半分の16種目の最終戦は前戦のチューリッヒ大会で実施)、優勝者が今年のダイヤモンドリーグ・チャンピオンに決定した。気温が15度以下と肌寒く、記録が望めるコンディションではなかった。女子400メートルのショーネー・ミラー(23=バハマ)の49秒46が唯一の今季世界最高。11種目にロンドン世界陸上金メダリストが出場し、そのうち8人が優勝するなど波乱は少なかった。

 世界陸上金メダリストが敗れた3種目は、伏兵的存在の選手が栄冠を手にした。なかでも意外だったのが、男子200メートルに20秒00で優勝した20歳のノア・ライルズ(米国)だ。全米選手権優勝のエイミール・ウェッブ(26=米国)が20秒01、世界陸上金メダリストのラミル・グリエフ(27=トルコ)が20秒02という接戦を制した。

 ライルズは5月のダイヤモンドリーグ上海大会に優勝していたが、故障があったのか全米選手権の準決勝以降を棄権し、世界陸上代表入りができなかった。ダイヤモンドリーグも最終戦前の累計ポイントは11位で、リオ五輪銀メダルのアンドレ・ドグラス(22=カナダ)ら上位選手の欠場が多く出て、8人の出場枠に入ることができた。

 「世界陸上には出られませんでしたけど、リベンジとかそういう気持ちではなく、自分に何ができるかを見るためにこの大会に来ました。最高の形でシーズンを終えることができ、来年はもっと良い走りができると思います」

 と、初々しいコメントをしたライルズ。ウサイン・ボルト(31=ジャマイカ)引退後の200メートルで、注目すべき選手が現れた。

 最後の1周がドラマチックだったのは、コンシスラス・キプルト(22=ケニア)、ソフィアン・エルバッカリ(21=モロッコ)、エバン・ジェイガー(28=米国)のロンドン世界陸上の金銀銅メダリストが激突した男子3000メートル障害だ。

 ジェイガーが水濠を越えて着地する際に転倒し、優勝争いから最初に脱落した。ホームストレートに入った時点ではエルバッカリが3~4メートルほどリードしていたが、最後の障害を越えてからキプルトが猛スパートをして逆転。8分04秒73で0・10秒差の接戦を制した。

 ダイヤモンドリーグが発足した2010年から昨年まで、ケニアが7年連続年間チャンピオンを出し続けている種目。最終戦前のポイントではエルバッカリがリードしていたが、今季から最終戦の優勝者が年間チャンピオンとなる規定に変更された。新システムを味方に付けたキプルトが伝統を守った。

 今シーズンを無敗で終えたのがキプルト、女子5000メートルのヘレン・オビリ(27=ケニア)、女子走り高跳びのマリヤ・ラシツケネ(24=ロシア。所属は中立国として出場)の3人。特に気温14度の寒さで2メートル02を跳び、2位に8センチ差をつけたラシツケネの強さは際だった。

 男子三段跳び優勝のクリスチャン・テイラー(27=米国)の17メートル49、女子棒高跳び優勝のエカテリーニ・ステファニディ(27=ギリシャ)の4メートル85も、寒さを考えればかなりの好記録といえる。4人とも五輪&世界陸上の行われない来季は、世界記録に挑戦していくだろう。

◆今季の男子200メートル

 第一人者といえる選手不在の種目となった。ボルトは今季100メートルにしか出場しなかったし、リオ五輪銀メダルで“ポスト・ボルト”の期待が大きかったドグラスは、故障で世界陸上を欠場した。

 400メートル世界記録保持者のウェイド・バンニーキルク(25=南アフリカ)が、世界陸上で2冠に挑んだが200メートルはグリエフに敗れた。そのグリエフを、ライルズがダイヤモンドリーグ最終戦で破った。

 今季世界最高タイムは7月に19秒77で走ったイサック・マクワラ(30=ボツワナ)。世界陸上では食中毒で会場入りを拒まれ、後日予選再レースを1人だけで行って話題となったが、決勝では6位だった。

 ボルトの後継者争いは、来季以降に持ち越された。