2020年東京オリンピック(五輪)・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長(82)が17日、都内で記者団の取材に応じ、国際オリンピック委員会(IOC)が提案したマラソン、競歩の札幌開催案について「IOCと国際陸連が賛成している。受けなければならない」と話し、東京から札幌への変更が確実な情勢となった。IOCトーマス・バッハ会長もドーハで「IOC理事会と組織委は札幌市に移すことに決めた」と二者間での合意を強調。東京都も出席し30日から3日間、都内で行われるIOC調整委員会で結論を出す。

森会長は札幌開催案をIOCバッハ会長の権限で決定した案とし、調整委のジョン・コーツ委員長の電話を通じて「これは相談事ではない。この案でやらせていただきます」と強い意思表示を受けた。

IOCの暑さ対策を検討する作業部会が選手の健康を考え、データを収集。札幌を選んだ理由は「東京と比べ気温が5、6度低い」「国際マラソンを開催している」「五輪開催経験がある」「30年冬季五輪招致を目指している」の4つ。既にバッハ案として札幌ドーム発着案も、森氏に示されていた。

引き金は中東ドーハでの陸上世界選手権。9月27日(現地時間)の女子マラソンは深夜11時59分スタートでも、高温多湿のため4割以上が棄権した。東京でそれ以上の惨状になるのではとバッハ氏が重く見た。

選手輸送や宿泊、警備、会場設営などで経費の大幅増加が見込まれるが「こちら持ちとなったら切ない。IOCに持ってもらいたいと伝えた」という。コーツ氏は「よく精査する」と回答した。

組織委は8日に突如、10日に予定していた五輪チケット2次抽選販売の記者発表を無期延期に。現場の職員は延期理由すら聞かされていなかった。IOCから札幌案を伝えられた日付を森氏は明かさなかったが、この頃だとみられる。9日には官邸で安倍首相と会談。10日には橋本五輪相と一緒に札幌市の秋元克広市長と会談している。

連休明けの15日、再度コーツ氏から入電で即承諾の催促を受けたが「都知事らにも伝えないといけない。待って欲しい」と言い、都側に連絡。翌16日には自ら都庁に赴いて小池百合子都知事に説明した。「知事は困惑していた。この時点で都は同意できない。だから調整委で協議しようとなった」と明かした。

実は、昨年にも北海道での開催案が関係者から提案されていた。森氏によれば「我々の計算にはなかったが(IOCの間では)前から出ていた」という。

水面下で進められ、開催地東京に伝えられたのは発表前日の15日。IOCはそれまで小池氏に相談することはなかった。16年、就任したての小池氏が突然、会場計画見直しをぶち上げて対立した因縁もある。開催地を置き去りに、IOCの強権ぶりが前面に出た。