20年東京オリンピック(五輪)のマラソンコースが札幌に移れば、蓄積してきた「地の利」の優位性が下がることは否めない。

日本陸連と連携し、コースの攻略法を気象データ面から支えるウェザーニューズ社の浅田佳津雄さん(44)は「3年前からしてきた準備が生かせなくなるのは残念」と話した。

日本陸連の科学委員会のメンバーでもある浅田さんのチームは、日本勢が東京の酷暑だからこそ、結果を出せる貴重なデータを作っていた。それは5メートルごとの気温、湿度、暑さ指数、風向、風速の予想。また可能な限り直射日光を避けられる位置で走り、体力の消耗を抑えられるよう、女子マラソン1年前の8月2日には、通過時間のコース上の日陰位置まで調べていた。スピードで劣る日本勢が環境を味方とし、実力以上の結果を出すカギとなる情報だった。このまま変更になれば、3年間の価値ある調査が無駄になる。浅田さんは「確率的には札幌の方が涼しいが、札幌の方が暑い日もある。場所を変えるにしても、もっと早く決断をできたのでは」と言った。

すでに札幌の気象データの把握に着手。だが、もう8月の細かな気象分析はできないため、今まで目指していた詳細なデータはそろえられないのも事実だ。春には日陰の場所を計測する予定だが、本番とは「太陽の高さ、位置が違う」ため、誤差は避けられない。それでも「できる限りのことはやりたい」。残り9カ月。また一から「地の利」を見つけ出す。【上田悠太】