2020年東京オリンピック(五輪)のマラソンと競歩の札幌移転案を巡り、国際オリンピック委員会(IOC)の調整委員長を務めるジョン・コーツ氏と東京都の小池百合子知事が25日、都庁で会談した。

今回の問題でIOC幹部と小池氏が直接会うのは初めて。コーツ氏は両競技の東京実施の可能性を問われ「ノーだ」と完全否定。移転で生じる追加経費の財源に予備費を検討するとし、都民の税金が充てられる可能性が出てきた。

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IOCコーツ調整委員長の発言は、開催準備を進めてきた東京都や、競技を楽しみにしていた都民にとって厳しいものだった。マラソン、競歩が東京で開催される可能性を問われたコーツ氏は、一刀両断した。

コーツ氏 答えはノーだ。東京がどうするのかではなく、もうIOC理事会で意思決定している。

札幌移転に伴い発生する追加経費は大会組織委員会と都が予算計画に含めている予備費を充てる検討を始めるとし、「財務的なマイナスがあれば(IOCが)対応する」と述べた。

大会予算には都と組織委が6000億円ずつ、国が1500億円を拠出する1兆3500億円以外に、予期せぬ事態が生じた場合に充てる予備費1000億~3000億円が明記されている。都や組織委によると、予備費はどの団体が負担するか決まっていない。

ただ、立候補ファイルや開催都市契約では、組織委が資金不足になった場合は都が補てんするとしている。組織委関係者は日々「組織委にはお金がない。ギリギリだ」と話しており、会場移転による追加経費の一部を都でまかなう可能性も出てきた。

一方、都はガチンコ姿勢を崩していない。小池氏が「都は負担しない」と言い切っている通り、都オリパラ準備局の担当者は「予備費は天変地異や災害があった時のためにある。今回はそれに当たらない」と断言した。

17年5月に決まった開催自治体の費用分担の原則では都外の仮設整備費は全額、都が負担することになっているが、これも「普遍的に適用されるものではない」とし、札幌移転の場合はこの原則に応じない姿勢を見せ、都税は使わせないとの強い意志を示した。

コーツ氏は「都の失望は分かる」とし代替案として、新国立競技場への道で、20年8月9日に行われる閉会式前に、選手によるパレードを行う計画を示した。両競技の表彰式は新国立で実施するとした。

マラソンチケットの購入者へは「払い戻しは早い段階で行われるだろう」と明言。選手の宿泊に関する補償なども検討するとした。

札幌移転案に続き、急転直下でパレード計画などが示され、組織委関係者は「何が何だか分からない」と困惑。最終的な調整は30日から3日間の日程で開かれるIOC調整委員会で行われる。【三須一紀】