14位で「花の2区」をスタートした学生最強ランナー、東洋大の相沢晃(4年=福島・学法石川)が1時間5分57秒の区間新記録を樹立した。09年に山梨学院大のモグスがたたき出した1時間6分4秒という、当面は抜かれないと思われていた記録を令和初の箱根駅伝で塗り替えた。

1区で、2年連続区間賞の西山和弥(3年=群馬・東農大二)が14位と出遅れたことによる逆境が力を呼び起こした。「先頭に1秒でも追いつこうと思った。想定していたよりも、たすきを受けるのが後ろだった中で自分の力は出し切れた」と潜在能力がさらに解放された。

1つ前の13位で発進していた東京国際大・伊藤達彦(4年=静岡・浜松商)とのデッドヒートも記録更新の力になった。7月にイタリア・ナポリで行われた夏季ユニバーシアードのハーフマラソンで相沢が金メダル、伊藤が銅メダルだった関係。「この記録を出せたのも伊藤君と一緒に走ったおかげ。大学を卒業しても切磋琢磨(せっさたくま)していきたい」。窮地でのライバルとの戦いを通して大記録を打ち立てた。

1時間6分台を切ったことには「自分でも6分を切る想定はしていませんでした」と驚いた。テレビ中継の解説を務めていた瀬古利彦氏から「良かったね。マラソン走るんですか?」と声をかけられると、笑みをこぼして「コンディションが合えば。大迫(傑)さんや設楽(悠太)さんが出られるのであれば競り合いたい」。状態次第ながら、初マラソンとして出場を模索している3月の東京マラソンへ意欲を見せた。

続けて、東京五輪マラソン男子代表に内定している中村匠吾(27=富士通)から「これから一緒にマラソン界を盛り上げていけるように」と認められると「中村選手の走りは高校時代から見ていましたし、自分も少しでも早く追いつけるように頑張りたいと思います」とコメントした。

衝撃の区間新。昨年、順大の塩尻和也が記録した日本人最高の1時間6分45秒を超えたどころか、モグスまで上回った。7秒の更新で史上初の1時間5分台。箱根駅伝100周年の節目に相沢が歴史的な快走を演じ、7人抜きで7位に浮上した。トップと2分2秒あった差を38秒まで縮めて3区の吉川洋次(3年=栃木・那須拓陽)にたすきをつないだ。