12年ロンドン五輪代表のディーン元気(28=ミズノ)が、復活優勝を飾った。

同じ91年生まれの新井涼平(29=スズキ浜松AC)と競り合って、最終の6投目に84メートル05のビッグスロー。東京五輪の参加標準記録85メートル00も視野に入る記録をマークして逆転勝ち。「ようやく仕事場に戻ってこられたという感じです」と穏やかな笑みを浮かべた。

無観客の大会で、ディーンが拍手を要望した。ディーンの6投目以外はすべての試技が終わったラストスロー。これまで争ってきたライバル新井ら7人がリズムをとりながら拍手を送る。その中でディーンはこん身のスロー。やりはぐんぐん伸びて、81メートル02でトップの新井を逆転。12年に記録した84メートル28に近づくセカンドベストをたたき出した。

やりが空中にある間に、投げた勢いで地面に倒れ込んだディーンは「行け!」と短く叫んだ。記録を見ると雄たけびを上げて右拳を尽きだした。その後も両腕を上下させて叫び続けるなどテンションもぐんぐんアップ。最後はユニホームを両手で引きちぎって、鍛え上げた上半身で国立競技場に仁王立ちだ。

「今日は100点満点です。(感情の爆発は)許してください。ユニホームをやぶっちゃって怒られる…」と照れ笑いした。

12年ロンドン五輪に出場。しかしその後は度重なるケガで精彩を欠いてきた。「ケガが治る前にシーズンに合わせることが多かった。ケガがあると、助走で脳みそがブレーキをかける。そのループでどんどん感覚が悪くなった」。今季は冬季にケガをすることなく、しっかりと練習を積んだ。「冬にリフレッシュできて、これで走って投げたら飛ぶだろうなと思っていた」と手応えをつかんでいた。

ライバルの存在にも感謝した。この日は1投目の79メートル88でトップ。5投目で新井の81メートル02に逆転された。それをラストスローで逆転した。ディーンは「新井のおかげで投げられた。勝負って楽しい」。新井も「同級生で高校、大学、社会人と戦ってきた。悔しい気持ちもあるが、うれしい気持ちが大きい。やっと一緒に戦える」と歓迎した。

シーソーゲームの末に好記録で逆転V。ディーンは「僕の中では五輪に合わせるのが上手かなと思っています」と来夏に延期となった東京五輪を見据えてにやりと笑った。【益田一弘】