来年に延期された東京オリンピック(五輪)のメインスタジアム、国立競技場で行われた、注目の男子100メートル決勝は、10秒14(向かい風0・2メートル)で桐生祥秀(24=日本生命)が制した。

予選では10秒09を出した第一人者が、しっかり結果を出した。

一連のレースを、伊東浩司氏が、鋭い視点で分析した。

桐生は、予選ですごくいい走りをした。スタートからしっかり走り、後半はケンブリッジに並ばれて動きが硬くなるかと思ったが、それもなかった。逆にケンブリッジが少し硬くなったぐらいだ。予選を見て決勝での9秒台を予想したが、タイムは10秒14。走り自体は予選と大きく変わっていない。これは、無観客による影響があると考える。

桐生、ケンブリッジら経験がある選手は、決勝で観客がいることに慣れている。名前を呼ばれた時の歓声、スタート直前の静寂などで、レースへの緊張感を高めていく。無観客はメンタル面でも難しいだろう。プロスポーツで観客の存在は大きいと思っていたが、陸上においてもやはり声援は大切なものだと感じた。

無観客の試合は、今後も続くだろう。選手は気持ちを盛り上げる方法を変えていく必要がある。この環境に慣れていくことも、これからの勝負になるだろう。(男子100メートル元日本記録保持者)