全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝)は来月1日、前橋市の群馬県庁前を発着点とする7区間(100キロ)で行われる。5連覇を狙う旭化成、マラソン東京五輪代表の中村匠吾(28)を擁する富士通、同じく東京五輪代表の服部勇馬(27)がエースのトヨタ自動車が3強と言われている。前回7位のヤクルトでは、小椋裕介(27)が2月にハーフマラソンの日本記録(1時間0分0秒)を樹立。1万メートル日本記録保持者の旭化成・相沢晃(23)との直接対決も注目されている。

小椋個人のニューイヤー駅伝の目標は「3区(13.6キロ)か4区(22.4キロ)、どちらでも区間3位以内」である。21.0975キロが日本一速い選手にしては控えめだ。

「日本記録は持っていますが、自分が一番速いとは思っていません。現状でも59分30秒を出せる選手が4~5人はいます」

だとすれば、あと1秒で1時間突破第1号の座を逃したのは無念だったのではないか。

「日本記録を出した丸亀のレースは、最後かなりダッシュしました。あのとき出せる精いっぱいでしたね。今度はしっかり59分台を出したいと思います」

どこまでも謙虚な小椋だが、日本のトップ選手がそろうニューイヤー駅伝で区間賞を取れば、日本記録以上の自己評価ができる。

ヤクルトは小椋と高久龍(27)が2枚看板のチームだ。前回のニューイヤー駅伝もチームは3区の小椋で4位に、4区の高久で3位に浮上した。4区終了時にはトップのトヨタ自動車と26秒差だった。

小椋が自分のトレーニングを見直すきっかけとなったのが、高久と一緒に出場した19年4月のドイツのハンブルクマラソンだった。自身は2時間40分50秒と大失速したが、高久が2時間10分2秒の自己新をマーク。2人とも3月のマラソンからの連戦だったが、高久はハンブルクの結果で9月のマラソン・グランドチャンピオンシップ(MGC)出場権を得た。

小椋は高久を見習い、ウエートトレーニングに本格的に着手。「青学大でやっていた体幹トレーニングと両輪」にして行い始めた。週に2~3回行う負荷の高いポイント練習翌日もジョグがしっかりできるようになり、ロングジョグの時間は「1回で2時間から2時間半」は行うようになった。

2枚看板以外では城西大から入ったルーキーの荻久保寛也(23)が、秋に5000メートル、1万メートルとも自己新をマーク。スピード型の選手として期待できる。スタンネリー・ワイザカ(20)は前回のニューイヤー駅伝2区で区間6位、今年の東日本実業団駅伝でも2区で区間3位と安定した強さがある。両大会で1区を走った武田凛太郎(26)は「年間を通して練習を安定して行っていて信頼できる」と本田竹春監督から評価されている。

「区間配置は何パターンか考えています。前回のように(4区を終わって26秒差と)うまく行くとは思っていませんが、4区終了時点できるだけ良い位置に付けたいですね」(本田監督)。

目標は、前回7位だからそれ以上、とは考えない。「8位入賞です。常時、入賞できるチームにしたい」。再現性の低いことを期待するのでなく、いつでも出せる力をしっかりつける。それがヤクルトの強化スタイルなのだ。

小椋もその考え方で強化している。

前回のニューイヤー駅伝3区では10キロを27分37~38秒と、ハイペースで通過した。追い風と下り気味のコースだから出せるタイムだが、「タイムの常識を放り投げて、速いと思わないようにした」と言う。それがハーフの日本記録へつながったと見ることもできる。

だが小椋はその点よりも、自身のトレーニングの効果が出始めたからだとみている。「ウエートを始めたのは昨年5月からでしたし、11月から高強度の練習を始めていましたから」。

日本記録保持者として走ることについては、「注目されますかね。五輪種目じゃないですし」と言った後に、次のように続けた。

「取り上げられることが増えて、出会う方、応援してくださる方が増えたのは良いことですが、競技に直接プラスになったことはありません。僕自身がやれることをやるだけです」

肩書が足を速くするわけではない。自分にできるのはトレーニングであり、そこに手応えは感じられている。再現性の高いものを身につけるヤクルトのやり方で、小椋は区間3位以内を、チームは連続入賞を目指す。

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