陸上の女子1万メートルで日本歴代3位の30分45秒21を持つ不破聖衣来(せいら、19=拓大)が、5区(9・2キロ)を29分39秒で走り、区間賞を受賞した。万全ではない中、1年時の昨年に6人抜きしたエース区間で、順位を3つ上げ、「沿道の声援もあり、楽しく走れました」と笑みがはじけた。

7位でタスキを受けると、姿勢の正しい、きれいなフォームで走り始めた。ケガと不調に苦しんだ1年。6人抜きした昨年より入りのスピードは遅い。1キロ手前では、関西大の飯島に抜かれ、8位に落ちた。だが、すぐに抜き返すと逆にどんどん差をつけていく。7キロすぎにはさらにギアを上げる。東京農大と城西大を続けざまに抜き、5位に浮上した。8キロすぎには4位大東文化大をとらえる。9キロ手前でしっかりと抜いて、4位でタスキを渡した。

欠場危機を乗り越えての出場だった。145日ぶりの復帰となった9月の日本学生対校選手権の1万メートルで優勝。右アキレス腱(けん)痛や貧血からの復活を印象づけた。しかし、その後は1キロ5分のペースを維持できないほど調子を落としていた。

それでも、先週から全体練習に合流。五十嵐利治監督が「(悪い時と比較し)別人のような走り」と評する走りを見せ始めた。

不安は拭えなかったが、監督やチームメートからは「楽しめばいいよ!」と送り出された。記録ばかりが注目されるプレッシャーから、解放されたような気がした。

レース後は「まずは全日本に出られてうれしかったです」と笑顔を見せた。そして、「全くプレッシャーはなく、『楽しんで』と言われたので、任された距離を走るだけでした」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。

走ることは楽しい。それをかみしめた全日本女子駅伝だった。