往路を制した駒大が10時間47分11秒で、2年ぶり8度目の総合優勝を完全優勝で飾った。

2位中大に1分42秒差をつけて勝ちきった。連覇を目指した青学大は3位だった。駒大は出雲、全日本に続く優勝で、90年度の大東文化大、00年度の順大、10年度の早大、16年度の青学大に続き、史上5校目の同一年度3冠を達成。大会終了後、大八木弘明監督(64)は3月で監督を勇退すると発表。有終の美を飾った。

   ◇   ◇   ◇

「子どもたち」と呼ぶ選手たちに胴上げされ、大八木監督は3度舞った。「選手たちには感謝しかありません」。何度も選手たちへの「感謝」という言葉を繰り返した。

往路同様、復路も地道にタスキをつないだが、思わぬ事態が発生していた。当日のメンバー変更で7区を走る予定だったスーパールーキー佐藤圭汰(1年)が数日前に腹痛を起こし、投入を見送った。今回8区にエントリーされていた主力メンバーの1人、花尾恭輔(3年)は調子が出ず、当日に外した。主力2人がいなくても、1度も首位の座を譲らない。「青学大よりも厚かった。ギリギリだったけど」。選手層の厚さで完全優勝を果たした。

往路の山登りの5区山川拓馬(1年)の好走に続き、伊藤蒼唯(あおい、1年)が山下りの6区で区間賞に輝く快走を見せた。大八木監督は、復路も重要な山区間にルーキーを抜てきした理由を「この1年で故障もなく練習をやれていた。適性を見抜いたから」と説明した。

駒大は過去に2度、3冠に王手をかけていた。98年度は順大に、13年度は東洋大に敗れ、いずれも2位。「三度目の正直」となった。監督は3冠達成の要因を「選手たちの勝つんだという強い気持ちと選手層の厚いチームを作ったということ。復路も花尾、佐藤がいなくてもこれだけの結果を出せた」と分析。「3冠をやれば、大学で監督としてすべてやってきたという思いもある。最後に子どもたちが素晴らしいプレゼントをくれた」と達成感に笑顔を見せた。

優勝会見後に、3月での勇退を発表した。次期監督は藤田敦史ヘッドコーチ(46)が務め、4月からは総監督に就任する方向。勇退を決めた理由を「体力的にも現場にいるのがきつくなった。(寮母を務める)女房にもまかないをずっとやらせて苦労させっぱなし。休んでもらいたい思いもあった」と明かした。そして、これまでの監督人生は「こんなに幸せな監督はいないんじゃないかな。子どもたちに恵まれた」と感慨深げに振り返った。

世界に挑戦する選手育成が目標の1つ。4月からは卒業後も実業団で競技を続け、駒大を拠点とする田沢らのサポートを行う。「人生でのラストチャレンジをしようかと。今はホッとしているが、現場にいくとワクワクするタイプ」。名将は3冠を花道に、新たなステージに挑む。【近藤由美子】

▽大八木監督アラカルト

★選手時代 会津工業高校卒業後、実業団の小森印刷に就職も、24歳で駒大の2部(夜間)に入学。川崎市役所で働きながら競技を続け、箱根駅伝は1~3年まで3度出場。5区と2区で区間賞。

★指導歴 95年4月に低迷していた母校の駒大のコーチ就任。2年目の96年度の箱根駅伝で復路優勝、総合6位に押し上げる。助監督をへて04年4月に監督に就任した。

★3大駅伝27勝 コーチ、助監督時代を含めて、出雲、全日本、箱根の3大駅伝優勝27度を誇る。

★箱根4連覇 01年度~04年度まで箱根駅伝総合4連覇を達成。03年度の3連覇は往路・復路の完全制覇を成し遂げる。

★全日本3連覇 06年度~08年度まで全日本を3連覇。07年度は箱根との2冠を達成。

★駅伝3冠 22年度は出雲、全日本、箱根と3大駅伝を制して、史上5校目の3冠達成。箱根は往路・復路ともに制する完全優勝。

 

◆大八木弘明(おおやぎ・ひろあき)1958年(昭33)7月30日、福島県生まれ。会津工卒後、川崎市役所などを経て83年に24歳で駒大夜間部に入学。1年で5区区間賞、2年は2区5位、3年で2区区間賞を獲得。4年は年齢制限で出場できず。卒業後はヤクルトで活躍。95年に母校のコーチとなり、助監督を経て04年に監督に就任。

 

▽1区・円健介(4年) 後輩たちの目標に応える走りがすごく伝わってきた。

▽2区・田沢廉(4年) 総合V、完全勝利で3冠できて心に残る試合だった。

▽3区・篠原倖太朗(2年) 背中を見せてくれた上級生がいて勝てたと思う。

▽4区・鈴木芽吹(3年) 4年生の頑張りを見て、3年生も頑張れた。

▽5区・山川拓馬(1年) 来年もチームの底上げをできるように頑張りたい。

▽6区・伊藤蒼唯(1年) 区間賞を糧に来年も3冠できるように頑張りたい。

▽7区・安原太陽(3年) 来年は3冠へ最上級生として引っ張っていきたい。

▽8区・赤星雄斗(3年) 監督と4年生が作ってくれた最高のチームだった。

▽9区・山野力(4年) 新たなチームで強い駒沢を築いていってほしい。

▽10区・青柿響(3年) 4年生が抜けた穴は大きいが、それを埋めたい。