今大会の金栗四三杯(MVP)には、東京国際大のヴィンセント・イエゴン(4年)が輝いた。2年時に留学生選手として初受賞しており、2度目の獲得となった。

閉会式で1人でステージに上がると、4年かけて上達した日本語で「ありがとうございました。今はめっちゃうれしいです」と喜びを表現。他大学の選手からは、温かい拍手で祝福された。

ヴィンセントはケニアからの留学生選手。2日の往路4区(20・9キロ)で8人抜きを達成し、1時間0分0秒で駆け抜けた。20年の吉田祐也(青学大)の記録を30秒も更新し、区間新記録を打ち立てた。

1年時の3区(21・4キロ=59分25秒)、2年時の2区(23・1キロ=1時間5分49秒)に続き、往路の異なる3区間で新記録を樹立は史上初だった。

ケニアから来日した19年4月当初は、言葉が通じなかっただけでなく、シャイな性格も相まって、部員との間には壁があった。しかし、練習中に好タイムを出すと、チームメートからグータッチを差し出されるようになった。仲間の歩み寄りをきっかけに、チームに溶け込めるようになり、持ち前の脚力にも磨きがかかった。

2日のレース後には「勇気を持って走った。いい思い出になった」とほほえんだ。小田原中継所に詰めかけた大勢のファンから、写真撮影やサインの要望を受けると、その全てに対応。誠実な人柄がにじんだ。

驚異的な記録を残すだけでなく、人の心にも刻まれる“最強留学生”だった。

◆ヴィンセント・イエゴン 2000年12月5日、ケニア生まれ。19年4月に「言葉と練習方法を学ぶため」に来日。1年時の箱根駅伝では同大史上最高の総合5位に貢献。2年時には2区の区間記録を8秒更新し、大会MVPの金栗四三杯を留学生として初受賞。1万メートルの自己ベストは27分24秒42。好きな和食は牛丼。愛称はヴィンちゃん。184センチ、68キロ。